2002-01-01から1年間の記事一覧

「仕事納めなのか」-0472-

現在、日当直中。世間が仕事納めだとか冬休みだとかクリスマスだとか浮かれている中、浮かれすぎて体を壊した人をみる係。年末の買い物で転んで骨折したり、スノーボードで転んだり、どっか切っちゃったり、お腹痛くなっちゃったりした人々を診ています。 ク…

「そして大学へ」-0471-

僕の来年の人事がおおまかながら見えてきたのです。大学医局で今年に入って二度行われた人事委員会で、僕ら新3年生(医者になってからもこういう呼び方をよくします)の行き先は、ほぼ確定したのだそうです。 本拠地、大学の病棟に3ヶ月、関連病院での麻酔科…

「乳癌検診」-0470-

血液型と性格の関連性とか、宇宙人の存在とか、それを誰の目にもわかるようにきちんと結論を導き出した論理というのにはまだ巡り会ったことがありません。関連が無いというからには、全部を一切否定できるきちんとした根拠が必要であって、それが無ければ、…

「賞与」-0469-

医局というなんだか得体の知らないものに属していて、その人事で病院を転々とするのだけれど、見た目には、毎年のように退職と採用を繰り返すという状態なのです。去年は1年間、大学に日雇いで雇われていて、3/30まで契約更新し、国のいろんな陰謀で、強制…

「初雪」-0468-

雪は割と多い地方です。大学からさらに北へ一時間くらいのぼったところです。周りには有名な温泉地やらスキー場やらあるところです。 12月に一度はそれなりに雪が降るという話はきいていたし、昨日はだいぶ寒かったので、午前中の回診を終えたあと、病院から…

「組長、来院?」-0467-

たまに困った人もやって来るのだけれど、露骨に追い出したりも出来ないのが病院という場所なのです。 夕方、「救急車で足の痛い人が運ばれてくるらしいから、ちょっと診ておいてくれ」と、僕のボスから院内PHSでコールがあったのでした。「…ちょっと酔っぱら…

「嘘つき救急車」-0466-

駆け込みでやって来られるよりは、事前に電話の一本でも入れておいてくれたほうがいろいろと助かるのです。いざというときに専門科の医師を呼んだり、三次救急の病院に搬送したりするのに一時間はかかるという田舎の病院ならなおさらなんです。 ただ、この病…

「結婚観」-0465-

病院の外の出来事に疎くなって一年半も過ごしているうちに、大学時代のいろんな知り合いが結婚したりしていたのでした。 昔、サンダーバードを弾いていたベーシストは、この間の学園祭では、自分の子供の前でワーヴィックを弾いていたし、酒を呑んでいる姿し…

「ボクの彼氏はどこにいる?」-0464-

田舎の病院に移ってから頻度が増えた様な気もしますが、僕は本当にインターネット通販を重宝しているのです。特に、本やCDの通販はアマゾンのようなサイトをかなり頻繁に使っています。 かつて買いそびれた本を注文したりするほか、近所の書店では目にしなか…

「ラパ胆とか」-0463-

胆石の治療には、まだまだ手術が必要です。肝臓の下のあたりにへばりついている胆嚢をとるために、かつては大きくお腹を切らなくてはなりませんでしたが、今日では、腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy)が標準術式となっています。もちろん炎…

「私はお腹が痛いです」-0462-

言葉が通じない患者、というのは割と良く巡り会うものです。 それはただただ泣き叫ぶ乳幼児であったり、訛りがひどすぎる相手であったり、消え入るような声しか出ない老婆であったり、もしくは日本語以外を母国語とする人々なのです。 いつものように真夜中…

「異状死体」-0461-

回診後の指示出しやら、ケモ(化学療法)患者の点滴刺しやらしているところへ、院内PHSで「交通事故で心肺停止の患者さんが来ます」との連絡が入り、あわてて救急外来へ移動、その直後に搬送されてきた患者さんは特に外傷は無い様子だが意識は全く無く、呼吸も…

「救急車に乗って」-0460-

僕の住むこの地方は、残暑のあとにすぐ冬がやって来るようです。 ちゃんと統計をとったわけではないけれども、季節の変わり目には急患が多い気がするのです。緊急のアッペ(虫垂切除術)なんかも、季節の変わり目にまとめてやって来るような気がします。 僕の…

「癒し」-0459-

僕の通っていた大学は、3つのキャンパスにわかれていて、各々が独立した学園祭を催すのです。先日は、教育学部のキャンパスが中心となった学園祭で、各キャンパスのジャズ系団体の合同ライブが行われたのでした。買い物に行くついでに、ちょっとよってみた…

「ゼク」-0458-

祖父の通夜、葬儀、納骨と、つつがなく終わりました。 斎場は僕が六年間通った小学校の隣でした。葬儀屋は、小学校から高校まで一緒だった友人の家で、彼は既に結婚して、斎場に隣接した新居に暮らしているらしいのです。他の多くの人々と同様、彼とも、高校…

「逝去」-0457-

奇跡的に平和な病院当直の夜を過ごし、そのまま朝を迎え、唯一僕を起こした電話は、祖父の訃報でした。両親は共働きで、小学校へは母の兄の家から通ったのです。床屋の仕事をしながら、祖父母は僕と弟を育ててくれたのです。 何をおいても訃報と同時に駆けつ…

「手技」-0456-

小児科医と一緒に当直をしていた時に、「外科っていうのは、できる手技や手術が増えていくことで、成長していくのが目に見えてわかるけれど、小児科っていうのは、何年たっても点滴するくらいだから、変化が感じられなくて。内科の先生も、内視鏡とか覚えて…

「学会で」-0455-

今日の手術は、大腿ヘルニア一件のみ。麻酔科医がやって来る月曜日と水曜日にはメジャーなオペがガンガン入っているのが普通なのに、今日に限ってはかなり寂しいスケジュールなのでした。別の患者さんの術後肺炎のフォローアップをしたり、末期の患者さんを…

「患者の気持ち」-0454-

胃カメラ6件と回診を終えると、今日は奇跡的に大きな検査の予定も入っていないし、乳癌検診の予定も入っていないのでした。 そんな平和な日を狙って、やっぱり急患はやって来るのです。尤も、忙しい日にもやっぱり急患はやって来て、さらに忙しくなったりす…

「酒とベースとアガリクス」-0453-

土曜日の夜、あるバーで、久々にジャズライブをしたのです。ライブとは言っても、スタンスは呑み屋でジャズ、呑みながらジャズ。雰囲気的には公開練習のようなものかも知れません。 実は、器材を運び込み、いざ演奏をという段になって、病院の当直医からコー…

「ワザ」-0452-

これは僕の考え方だとかいう以前の、僕が僕であるための本質的なことに触れることなのです。それ故、僕は自分の凄く弱いところをみせたりすることのできる相手に対しても、ある限られた事柄に関しては演技し続けることを余儀なくされているのです。いつかこ…

「安らかに眠る」-0451-

ステルベンを待つ夜の気持ちは微妙なのです。癌という病気は、術中死とか突然死ということはあんまり無くて、だけど確実に死は忍び寄ってきて、最期に至る兆候はなんとなくわかるのです。僕らはそんな頃合い、患者さんの意識があるうちに、親しい人々の面会…

「別に暴言を吐くために匿名では無いのです」-0450-

ええと、見る人が見ればザウエルという人物がどこの誰だか分かるのだと思うのだけれど、敢えて匿名で、敢えて実生活とは関係ないところでサイトを運営しているという意味を考えて欲しいのです。 職務上知り得た秘密というわけでないにしろ、日常生活を描く上…

「心臓マッサージ」-0449-

実のところを言うと、自分の身内の死というものに出くわしたとき、人間なら当然湧き上がってくるであろう感情を、きちんと感じることができるのか不安だったのです。 死んでいるという状態を、僕らは理解しているはずで、かつて死はとても分かりやすいものだ…

「遠い」-0448-

大学は実家に隣りあう県に入学し、卒後もその県にとどまったのでした。地理的にはそう遠くないはずの場所なのです。大都市への道ではないので、電車や高速道路などは都合良く通っておらず、気長に車を走らせて4時間くらいかかる距離です。成田から韓国へ行…

「外道の外科」-0447-

外科医が外科医である理由とか存在意義とかはその名前通り外科的手技にあるわけで、僕らは手術やるために外科医をやっているのだけれど、毎日延々と手術に継ぐ手術だと、さすがに嫌になるのです。今日は大小計4件の手術を終え、病棟で術後管理、ボスは「何…

「東京への距離」-0445-

ハッピーマンデー。月曜日に休みが集中するのはなにかと不都合なんですが、とにかく今日が体育の日らしいです。 医学部の軽音学部のライブをちらっとのぞいて、「半宇宙」というバンドのライブへ。バンドのベーシストは、事あるたびに呑んだり遊んだりした仲…

「お釣りの渡し方」-0444-

今日は回診当番。僕の勤務する病院は、田舎でまわりにあんまりこれといった医療機関のないところに存在する2次救急指定の赤十字病院で、周囲の有名な温泉地なども含めた、かなり広域な医療圏を形成しています。連休などは、地元民のみならず、観光客が飛び…

「呑み屋でジャズ」-0443-

かつて、演劇というものに魅せられて、いつまでもその世界にいたいと思って、かつての仲間とどこかで芝居をやろうなんていう話に盛り上がったりしていたものなのだけれど、結局それは果たせずじまいだったのです。かつての仲間の中で、ごく少数の人間だけが…

「外科医として生きる」-0442-

例えば僕のひとつ下の研修医、たかだか数ヶ月しか働いていない彼らも含めてそのほとんどが、医者をやめてやると思う瞬間があるようです。自分の科の仕事が一番忙しいと思いこんでいることが多い一般外科医の場合、それに一段階おいた「外科医やめてやる」と…