うどんと温泉

 午前中回診。まあまあ平穏。週明けの入院患者に対する準備などをしているとやっぱり正午を過ぎる。どうせ明日も回診に行くので、書類仕事は明日にすることにして退勤。遅めの昼食。オンコールはあくまで拘束料など支払われないボランティアということで病院の中でも確認している。基本的にはお酒も含めて自由に振る舞って良いはずなのだけれども、やはり完全自由とは言い難いし、少なくとも行動範囲はかなり狭められる。いつかかってくるとも分からない電話というのは僕にとってはこの上ないストレスであるし、以前ほどはびくびくしなくなったとは言え、例えば映画を観に行くとか、遠出するとかいうことはしにくい。人と約束して会うということが難しいというのもとても苦痛だ。だから僕にとって、オンコールでは無い休日というのは、この上ない解放感を得られる瞬間なのだ。この苦痛と解放は、同じような縛られかたをした人間にしか分からないんだろうと思う。サービス残業とかそういう苦痛とは全く異なるものなのだ。
 今晩は、友人宅にみんなで集まることになっていたのだが、その友人が熱を出してしまったため、その予定が無くなってしまった。オンコールに縛られている中、友人宅での集会というのは距離的にも非常に都合が良かったのだけれど、病気では仕方がない。じゃあ別の場所でほどほどに呑むかと思って出かけた瞬間に病院から電話がかかってきた。病院へ出向くほどの事にはならなかったのだけれど、なんとなく出鼻を挫かれたというのもあって、お酒はやめておいて、おとなしく夕食だけ摂ることにした。
 夕方たまたまつけたテレビで讃岐うどんの番組をやっていたのに簡単に影響されたので、近所のショッピングモール内のフードコートでうどんを食べた。地方出店のショッピングモール全般、男性が買い物を楽しめるようには設計されていないように思う。フードコートも決しておいしい店が入っているわけでも無く、どのモールにも同じようなチェーン店が入っているのだけれど、遅くまでやっているのでそれなりに利用価値はある。あと、大きな書店が入っているのでそこはたまに使う。服に関しては、新宿のデパート各店のメンズ館の充実っぷりを目にしてしまうと、新宿に行った時にだけ買い物すればいいやという気にさせられる。
 服は充実していないのだけれど、近所に温泉が湧いている。肩凝りのこともあり、夕食後に温泉につかってから帰宅した。twitterのタイムラインに「風呂はいったあとに後悔した事が無いから、めんどくさいけど風呂に入る」なんて流れてきたことがあったけど、確かに後悔したこと無いな。僕はお風呂大好きだし、あんまりめんどくさいと思わないしね。
 かつては入浴中に、電話の音の幻聴を聴いたりしたものだった。最近は電話にすぐ出られなくてもその時はその時とある程度割り切れるようにはなってきた。どうせ超緊急だったら病院内にいる当直の先生に対応してもらわなければどうにもならないし、そうでは無いのであれば、別にその瞬間に連絡がつかなければならないということも無い。携帯電話や院内PHSが当たり前になってしまったせいで、特に緊急ではないコールもずいぶんせっかちだ。自宅にいたって、風呂やトイレにいることもあるだろうし、携帯電話を常に身につけているわけではない。それでも、「ザウエル先生に連絡がつかないので」なんて言われて上の先生に電話が回るのを極度に恐れていた時期もあったし、今でも少なくとも自分のコールの日に連絡がつかなかったと言われてしまうことに関してはそれなりに恐れてはいる。
 しかし結構遅い時間に、子供連れでショッピングモールや日帰り温泉に来ている人がかなりいる。幼い子はもっと早く寝させた方がいいと思うのだけれど。人間の体は夜を夜として過ごすように出来ているし、幼い子にとってはなおさらだ。こうして子供も含めて夜中まで起きているという生活をしているから、様々な業種に夜中の営業が求められていく。そういうのが不健全だと考えているというのは再三綴ってきた如くである。

ねないこだれだ (いやだいやだの絵本)

ねないこだれだ (いやだいやだの絵本)