手術結果

術後いろいろと大変になる患者さんというのが存在する。原疾患の程度、基礎疾患の程度、手術手技など、それをひきおこす要因はたくさんある。真っ当な治療を行ったとしても、ある確率で術後のトラブルというのはおこる。最近の医療ミス報道は、どうも結果が芳しくなかった症例をひとくくりにしているようなところがあるので、僕らは哀しくなる。
もちろん、自分の患者さんの症状がよくない方向へむかうのを、「仕方がなかった」のひとことで片づけるつもりなんてない。もっとやりようがあったケースもあったと思う。でも、それがミスなのかといわれると、そうではないと思う。
ある会話が僕をひどく悩ませた。僕とは一緒に仕事をしたことが一度もないあるスタッフの言。かつては外科病棟にいたので、僕の前任者とは一緒に仕事をしていたことになる。
今年に入ってから術後のトラブルが多いような噂をきいたのだけれど、それは、僕が手術を雑にやっているからではないのか、というようなことを言われたのだ。
どういう意味でそんなことを言うのかわからない。確かに、僕はまだまだ修行中の身であり、手術は決してうまくない。というか、うまい、うまくない以前に、一人で手術なんてとてもできない。名ばかりの「執刀医」は数多くさせてもらっているけれど、基本的には上級医とともに手術に入り、指示通りに手術をすすめる「操り人形」に近いものがある。適当な手術のまま終了することもありえないので、術後の運命を激しく左右するような重大な操作を、僕単独で行えるわけがない。無論、ベテランの先生が操るとしても、人形の質というのもいろいろ手術に影響はあるだろうけれど。
術後のトラブルというのはある程度はさけられないものであり、また、当然基礎疾患の多い人や体力のない人ほどその危険度があがるので、単にトラブルの数だけで、手技の問題を単純比較はできない。また、去年の状態がどうだったのかはよく知らないし、実際に僕の症例に関して、手術も病棟管理もみていない第三者が、どういう気持ちで発した言葉なのか理解しかねる。
確かに、基礎疾患が多く、全身状態が悪い症例での手術などで、術後のトラブルが多かった時期がある。もちろんその個々の症例に対し、思うことはたくさんある。中には不幸な転帰をたどる症例もあるわけで、僕も上司も、常にそれを思い出しては、いろいろ話し合っている。
僕が適当に手を抜いて臨床をやっていたとか、手術や術後管理トータルをみた上で、未熟な治療しかしていないというのであれば、先述の言葉とか、「医療ミス」という言葉で評価されなくてはいけないのだと思う。
現在、多くの指示は僕が出し、手術も「執刀医」の位置に立たせてもらっていることは多いのだけれど、もちろん、上級医とともに治療を行っているわけで、僕の独断でつきすすむことはない。意見を主張することはあっても、上級医に黙って、上級医の判断とは違うことをするということはない。
そういうことを総合すると、単に、術後のトラブルが生じた状況に対する、僕も含む医療チームへの批判というようにもとれる。
うまく言えないのだけれど、ずっと先述の言葉が引っかかっている。だけど、なんとなく上級医にも相談しにくい内容。