診断書

Half-Boiled Doctor>更新記録の10/28
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患者のニーズを満たすために「虚偽とはいわぬまでも、かなり信憑性に欠ける診断書」を書くことはままある。

外傷とか不定愁訴で救急外来を受診し、すぐに診断書を書けと騒がれても、「現在とりあえずは明らかな問題はなさそうですが、時間経過とともに現れる症状などもあるので、時間をおいて専門医の診断を受け、必要十分な検査施行後に診断書を書いてもらってください」なんて説明をするわけですが、納得しない人もたくさん。
喧嘩とか傷害事件とか交通外傷などだと、診断書を急かす人はさらに多くなる。警察は警察で、「とりあえず病院で診断書をもらってこい」みたいなことを言うようなのである。救急外来はあくまで救急対応の場であって、診断書を書くとかそういうことは原則対応しきれない。今働いている病院など、立て続けに救急車がやってくるので、当直中に、そんな時間のかかる、緊急性のないことに正直つきあっていられない。
また、受診時に症状がない人が「絶対」に異常がないのかといわれると、そもそも医療に「絶対」なんてないし、下手すればすぐ誤診だミスだと騒がれる昨今、引用文のような対応をせざるを得ないことも多い。
ただ、被害者と加害者が存在するような症例の場合、あとでこの診断書や診療記録をめぐって大もめになることもあるので頭が痛い。
多分ホントのヤクザはかかりつけの病院くらいあるだろうし、もっとスマートな方法で対処するようなことも、チンピラみたいなのが受診するとものすごく頭が痛い。医者や看護師の指示には従ってくれないから、きちんと診察できない。診断や処方に対して文句を言う。無理な入院を求める。
こうやってチンピラヤクザが大騒ぎしているような状況は、威力業務妨害などにあたるので、警察が動いてくれるはずだが、医者はプライドが高いのか、なかなか警察に連絡しようとせず、簡単な要求をのんでしまうことで事態が深刻化しやすい。すぐ警察に連絡を、なんてことが物の本にはうたわれているが、僕が経験した範囲では警察がちゃんと動いてくれたことはない。
かつて酔っぱらいに困った食堂が救急車を呼んでやっかいばらいし、病院に来た酔っぱらいは別にどこが悪いわけでもなく、本人も受診拒否。警察に連絡したら「落ち着いたらよんでください」というので、「落ち着かせるのはあなたがたの仕事です」と折り返し電話したら逆ギレされたり、いつの間にかやってきて、事情聴取を少ししただけで、まだ待合い室に取り巻き連中が大騒ぎしているのに引き上げてしまったらしく、「通常の診療に影響を与えるので、警察の権限でどうにかしてください」と連絡したのにまったく対応してくれなかったり。
実際の警察名をあげて関係省庁に抗議文書を送ろうかと思ったくらい。とりあえず、院内でトップにはなんらかの方法で伝えているし、カルテや当直日誌など、公的な文書に経緯は記録するようにしている。
あと、飲酒運転が疑われるような交通事故の場合、警察から後日「何月何日に受診した誰々は先生からみて酔っているようでしたか?」のようなことをきいてきたり、「採血した血液を一部わけてくれませんか?」などと言ってくることがある。このような調査は、本来警察が本人に対し直接行われるべきものであり、診療上の情報を、正式な手続き無しに警察に伝える義務はない。多分厳密には権利もないと思うのですが、どうでしょう? 下手なことをいうと、警察が「医者もお前が酔っぱらっていたっていってるんだ」みたいな取り調べをして、犯人に逆恨みされたりします。僕の今いる病院でも、過去、逆恨みで刺されちゃった医者がいたというような話もきくので、僕らは僕らの仕事を全うしましょう。警察の範疇は警察で。
あー愚痴です、愚痴。