さらに、偽医者

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20051208#p1
ここでプチ日記の12/7
http://www5.ocn.ne.jp/~otearai/diary.html

 何年間もバレなかったのもびっくりだが、地元では「名医」と評判だったらしいから、医者なんて実はそんなもんなのかもしれない。たいした病気じゃない患者なら、痛み止めとかテキトーに出しておけば勝手に治ってしまうんだろう。ややこしそうな病気の患者なら、「念のため大学病院に行ってください」とでも言えば済んでしまう。

 で、どのみち治るんだったら、よく話を聞いてくれる先生のほうが名医のように感じられる。ニセ医師は負い目があるから、患者のしょうもない訴えでも親切に聞いてあげていたのだろう。こう考えると、本当の名医かどうか見分けるなんてシロウトには無理のような気もしてくる。

 ぼくのような門外漢でも、「感冒専門外来」なら名医になれるかもしれない。必要以上にじっくり訴えを聞いて、休養を命ずるだけですが。

をとりあげましたが、12/8の記述、

しかし、自分にとって「名医」とは何かと考えてみると…

・訴えを丁寧に聞いてくれる
・質問や疑問にちゃんと答えてくれる
・痛くしない
・症状をすばやく治してくれる
・自分の望みどおりの診断名を付けてくれる
・欲しい薬をそのまま処方してくれる

 前半はまだいいとしても、後半の要望は「自分にとって都合のいい名医」であって、「社会にとっての名医」では決してない。

これなんですよね、現状。多くが、「自分にとって都合のいい名医」を探しているような気がします。そして、こういう人々は、自分に都合のよくないことは、それが医学的に正しいことだとしてもきく耳を持たない上に、突然感情論みたいな話に転換してきて「でも、医師たるもの、心も癒すべきだ」とかなんとか。
 僕も青臭い思春期には、そういう精神世界を大事にして、「医は仁術」という言葉を自分に都合のよいように解釈していました。拙著「お医者のタマゴクラブ」にも次のように綴ってあります。

お医者のタマゴクラブ

お医者のタマゴクラブ

もちろん、患者に辛くあたれと言うわけでは無く、知識不足を人情やら愛情はカバーしないということなのです。正確な知識を身につけた上で、人間味が問われるのであって、言葉通り、人情で病気が治るなら医者はいりません。医は仁術という言葉を間違って解釈するのは危険です。仁術は確かな技術が裏打ちせねばなりません。

 例えばですね、来院された患者さんに対し、ひととおりの診察をした上で、この状況であればこういう検査が必要です、とか、こんな薬が必要です、と説明するとします。もちろん、ある程度、患者さんに選択の幅はあります。多少治るのが遅くなってもいいから、なるべく薬は控えたいとか、その検査はもう少し様子をみたいとか。医者は、その話をきいた上で、譲れない部分は譲れない部分として再度呈示します。このあたりで、「自分にとって都合がよくない」方向への流れに対し、怒り出す患者ってのがいるのです。
 対した症状じゃないのに夜中にやって来るような患者さんに、諭すように「次回以降、もしこういう症状でしたら、少しご家庭で休んで様子を見て頂いて、その後も症状が続くようであれば、診察時間内に受診してください」なんて説明すると、「そんなこと言ったって、素人には体のことなんてわからないし、重症かそうじゃないか判断できない。心配なんだからいつ来たっていいじゃないか」と怒りだすくせに、同じ人が「診察の範囲内で、こういう状況ですから、この検査と薬は不要です」という説明には、「俺が欲しいっていう薬をなんで出さねえんだ。俺の体のことは俺が一番よく知ってるんだから、ガタガタ言わないで、あれとこれを出せ」と叫ぶ救急外来。
 僕らも人間ですからね。やはり気持ちよく診察したいんですよ。もちろん、病院は診察に対してお金を頂きますが、別にもうけようと思って救急外来をあけているわけではないところが大部分です。マンパワーにも医療経済にも多大な負担をかけ、緊急事態に備えているのであって、夜の方がすいているからとやって来る患者のためにあるのではないと思います。僕は聖人君子では無い、小さな小さな人間で、それなりの善意やボランティア精神は持っていますが、自分がどうなっても厭わないという、完全なる慈善の精神を抱いているわけではありませんので、「お金出してる患者様に対してなんだその態度は!」って偉そうにやって来る患者の神経が全く理解できません。まあ、もちろん診察はしますけれど。応召義務もありますし、適切な医療をしなければ健康を損ねるので、基本的にはどんな人に対しても同じ医療をしているのです。
 前に、謝礼金に関しての話題のときにも触れましたが、基本的に僕らは、罵声を浴びせてくる相手にも、無理矢理現金を握らせてくる相手にも、同じ医療をするしかありません。
http://d.hatena.ne.jp/zaw/20041215
ですから、謝礼はいりません。かといって、罵声はもっといりません。「ありがとうございます」なんて言われるだけで、相当嬉しくなれるんですよ。同じ医療を受けるなら、お互い気持ちよく受けたいですよね。医者が患者に怒鳴られながら「心まで癒してくれ」って言われても、そりゃ無理だな。自分に余裕がない人が、人にまでそんなに優しくできないし、人間対人間として医者と患者が対等であったとしても、医学医療に関しては専門知識を行使してもらうわけだから、そういう点は素直に医者を認め、感謝してもいいのではないでしょうか。医者の側から言うとなんかいやらしいですが。