偽医者、追記。

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20051206
 12/6の偽医者の話題に関して、コメント欄に書き殴ったもののまとめ。
 合法手段で医学部入るってこと自体が最も狭き門であって、医療行為は、難しいことを避ければ、誰でもできるってことですかね。無論、本当は医療行為が簡単なわけはないんだろうけれど、明らかに難しそうなものを除外していって、本来なら医者がどうこうする以前に、家庭や社会で年長者が経験に基づいて、「それくらいなら大丈夫だよ」「それならこの薬が効くよ」って言っていたようなレベルの話ならば、偽医者にでもできるのでしょう。ただ、今はもう本当になんでも病院にやって来るので、その中で本当に病院が必要な人をフィルタリングするのには偽医者というのは存外あっているのかも知れません。既にいろんなところで記述されているように、単なる風邪とかそんなの、医者が診ようが診まいが勝手に治るわけですし。(参考: http://d.hatena.ne.jp/zaw/20050719#p1 )
 件の偽医者が、外科的手技を避けていたのは賢明だったのでしょう。できるできない以前に、なにかおきたときに素性が分かってしまう可能性を恐れたのでしょう。そして、難しい症例をさけて、適当にバイトで病院渡り歩いていたほうが収入が多くなるという矛盾も浮かび上がってきます。極僕も直ちに医局をやめて、手術とか研究とかほっぽり出して、医者不足の病院の非常勤を渡り歩いて、面倒くさい症例は大学とか日赤に送っちゃって寝当直、という生活を続ければ、多分2000万円くらいもらえるんだと思うのです。真面目に働いているほうが、収入は少ないというおかしな現象。でも、これが現状。医者の摩訶不思議な給与体系。
 少し脱線しますが、例えばご老人のサロン化したような病院では、調子が良かろうが悪かろうが、いつもと同じ注射をして、同じ薬を出すことを求められたりするのですが、ここにあんまり真っ当な医学的見地を持ち出して、不要な薬を削ったり、患者さんの求める注射をしなかったりすると「あの医者は冷たい」だの、「頼んだ薬をくれない」だの言ってダメ医者のレッテルを貼られます。そういう病院に、たまに外勤に行くような身としては、かなり自分を押し殺して、患者さんの言うがままに薬や注射を指示するしかなくなったりもします。
 乱暴に言えば、そこに医学的見解が入り込む余地がほとんどないこともあります。患者さんにとってはそれで心が癒されるのだからいいではないか、といえばそうなのかも知れませんが、そこにマンパワーも資源も予算もとられてしまって回らなくなっているのが日本の医療です。老人だから負担を軽く、若い人に負担を求めるということではなくて、最低限必要な医療はどんなに貧しい人でも受けられるようにする一方、ご老人の趣味のような点滴は実費をとったっていいと思うんですよ。
 現在、どの病院においても、自分が診療の全責任を持つという立場にありません。そうなると、自分が最初から最後まで診るわけではないし、自分一人が突っ張ったって、他の医者が元の処方や注射を指示すれば意味が無いし、結局はその病院の暗黙のルールとか、院長の方針とか、地域性とか、そんな流れに左右されていくのです。そして、往々にして、患者さんはそれに満足するのです。
 さて、こんな状況下で、医者が患者さんの言うなりに機械的に前回来院時と同じ指示を出し続け、たまに検査をすすめたり、血圧や採血のデータを踏まえて処方変更や精査をかなり丁寧にすすめても、かたくなに新しいことを拒む人は多いのです。こういうところでは、自分の意志を一切入れない偽医者がかえって歓迎されるかも知れません。自分にやましいところがあるから、決して患者さんに強くはでないでしょうし。まあ、この場合、初診が診られませんけれど、いくつかのパターン認識でも、薬や検査のオーダーくらいはできるでしょうし。また、「素人」目にみておかしな人は他に回したり、いくらでも手段はあったのでしょう。
 まあ、昨今の報道をみると、そうやって親身に医学的に正しいことをしようとしても突っぱねられたとして、それでもなんとなく体調が維持されていればいいのですが、あとになって体調に問題が出てくると、説明義務違反とかなんとか言って叩かれるようですね。
 と、勢いでコメント欄に書いた時点では、やっぱりここまで赤裸々に書いちゃだめかもしれないと思いもしましたが、遠くない将来、日本が踏み込まなくてはいけない領域だと思うので、本文中にまとめてみました。
 プチ日記の12/7
http://www5.ocn.ne.jp/~otearai/diary.html

 何年間もバレなかったのもびっくりだが、地元では「名医」と評判だったらしいから、医者なんて実はそんなもんなのかもしれない。たいした病気じゃない患者なら、痛み止めとかテキトーに出しておけば勝手に治ってしまうんだろう。ややこしそうな病気の患者なら、「念のため大学病院に行ってください」とでも言えば済んでしまう。

 で、どのみち治るんだったら、よく話を聞いてくれる先生のほうが名医のように感じられる。ニセ医師は負い目があるから、患者のしょうもない訴えでも親切に聞いてあげていたのだろう。こう考えると、本当の名医かどうか見分けるなんてシロウトには無理のような気もしてくる。

 ぼくのような門外漢でも、「感冒専門外来」なら名医になれるかもしれない。必要以上にじっくり訴えを聞いて、休養を命ずるだけですが。

まさにこういうことだと思います。ネタに真面目に切り返しているようでなんですが。
 ちなみに、世界的に最も有名な偽医者は、天才詐欺師、フランク・アバグネイルJrでしょうか。
http://www.fujitv.co.jp/unb/contents/p228_1.html

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