m3.com

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 ソネット・エムスリーの提供する医療情報者向けポータル、m3.comからは、何度かダイレクトメールを受け取っていたものの、あまり利用価値を感じず、登録していませんでした。基本的に、自分の持つサイトで、ネット上での発言という欲求は満足できていたので、m3に限らず、医師あるいは医療従事者限定のサイトやメーリングリストというものには一切登録していませんでした。
 今回の産婦人科不当逮捕関連の情報を得たいと思い、また、ネット上での発言ということだけでなく、実名を掲げて積極的に協力したいと考え、先日m3へ登録してみたのですが、医師認証に時間がかかるようで、未だ医師限定掲示板へのアクセスが許されていません。支援グループ( http://medj.net/drkato/index.shtml )も、m3を利用した活動だときいておりますが、それ以外で私が医師であることを確認して頂けるのであれば、即刻活動にご協力いたします。m3にも、可及的すみやかに医師認証して頂けるよう、問い合わせのメールを送付してみました。
 もともと、ネットの利点というのは、それがオープンスペースであることだと考えており、こうした認証を要するクローズドスペースでの情報の交換ということをあまり重要視していませんでした。オープンスペースで、完全匿名でのやりとりというのもネットの魅力ではありますが、個人の素性をある程度明らかにした上での情報のやりとりというのも重要であるということを、今回の事件で再認識致しました。
 医師という専門的立場から、素性を明らかにして、責任を持った発言をするということが、今回の不当逮捕に対して、効果的な動きであることは間違いありません。この場所では、引き続き匿名の「ザウエル」という自称医師の発言を続けますが、今回の件は、実社会でも協力させて頂く所存です。
 ところで、ネット上でも複数の医者が書いていましたが、この事件への興味に、医者の中でも相当な温度差があります。友人の医師は「そういうところも含めて、日本の医者には人が良すぎるところがあるのだと思う。結局、良心にのっとって働けば、それで良いと思いこんでいる。あまりにも無防備すぎるし、既にそれでは自滅することがわかっている」と語っていました。ある医師は「ここ数年の医療バッシングや、医療の締め付けは、厚生労働省や国が、実際にどこまでやったら医者が本当に怒るのか確かめているのだと思う」と言っていました。結局、今までも相当な締め付けが行われましたが、それでも文句も言わず踏ん張ってきたのです。今回の理不尽さは、その域値を超えたということだと思いますが、忙しすぎる医者たちは、そもそもこの事件を知らなかったり、知ったとしても、遠い場所での話だと思っているのです。私も、現在外科の最前線にいたら、忙しすぎて、この問題もどうでもいいと思っていたかも知れません。たまたま、ベッドフリーの大学院生という立場であったため、ニュースを追いかける余裕もあったというだけの話です。
 そもそも、崩壊への道は、敏感な医師なら誰でも感じていたことだと思います。しかし、脳天気にも、お偉いさんは「最近の若い医者は、患者にやたらリスクの話ばかりして、必要以上に怖がらせ、自分の身を守ろうとする。危険だからと、難しい症例や専門外を診たがらない。哀しいことである」なんて発言していたりもしたのです。私に言わせれば、これは、完全に現場を知らない、実際に働かない人の意見です。あるいは、パターナリズムの時代の正論であって、現代において現実的ではありません。もちろん、あまりにも防衛医療に走りすぎることが、医療の崩壊へむかうことは当の医者たちには良く分かっていることなので、哀しいことだとは思っているのです。だからこそ、私も何年も前から、異常な権利意識と、過剰なバッシングによって医者を締め付けることは、かえって患者側の不利益になるということを言い続けてきたのです。