不買運動?

 先日、フジテレビで放送された医療番組がそれはそれは酷いものだったそうです。まあ、医療番組が酷いのは今に始まったことではありませんが、今回のものは、今までに類をみないような、かなり酷いものだったようです。

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山田花子  司会/小倉智昭 今田耕司 中野美奈子

 実は、僕も当直先で一瞬だけみたのですが、5分ほどで耐え難くなり、消しました。今までの医療番組は、酷いとはいっても、イライラしながらも観ていることはできましたが、今回のはもう生理的に受け付けなかったのです。ネット上で、この番組に憤慨する声を相当みかけましたし、昨日の外来では、患者さんに、「病院は全部ダメだ、みたいな酷い番組やってましたねえ」なんて言われてしまいました。歪んだ情報を無批判に受け入れる人以外は、医者じゃなくても番組の酷さを察したのだと思います。
 テレビ局に抗議しても軽くあしらわれるのもいつものことなのですが、今回は、スポンサーに製薬会社がついていたらしく、その会社の製品の不買運動という声があがっているようです。 政治が世論を気にして、マスコミが世論を操作するのだとしたら、現代の資本主義社会で一番強いのはマスコミで、唯一そこに圧力をかけられそうなのは、金を持っているスポンサーなのかも知れません。
 具体的には、その会社の薬を、同効の別会社の製品に切り替えるってことなのでしょう。その会社にしか存在しない薬というのはそんなにないので、この方法だと、確かに製薬会社にだけダメージが与えられますね。不買とまでいかなくても、出入りしているMRに、全国で一斉に苦情を言ってみるというのも効果的かと思いますが、いかがでしょうか。
 あ、それにしても、ああいった番組にでてきて持論をべらべらしゃべる医者ってのはいつも同じような顔ぶれですが、彼らはいつ臨床しているのでしょうか? 滲み出る「俺だけは偉いんだ」という態度が気に入りませんし、ああいう医者にだけはなりたくありません。彼らが、枠をはみ出してやりたいような医療をやって、たまにマスコミに登場して、自分以外の医者を徹底的にこき下ろすというのは、足元が全くみえていない気がします。
 彼らが枠を無視して好き勝手やっている陰で、彼らに言わせればバカみたいな、ナンセンスなシステムの中で、淡々と医療を続けている医者がいるということを少しは想像して欲しいのです。そして、スーパーマンのような医者ばかりではなくて、必ずしも高度な医療をこなせなくても、日常診療を淡々とこなせる医者を必要とする患者さんが、世の中には数多くいるのだということを考えて欲しいのです。