高級料亭の味を再現?−ジェネリック医薬品

 厚生労働省のお墨付だから、テレビコマーシャルでもバンバン流れてます。「安くて、同じ効果!」
 やっぱり「同じ効果」を連呼するのは誇大広告以外のなにものでも無いと思います。同じ材料を使って、同じくらいの早さで胃の中で溶ける、ということまでしか確認されていないので、まあ、だいたいは同じような効果が期待できるんだろうけれど、そうでは無い場合があるということは、本来厚生労働省がきちんと説明すべきことなのに、そういう大事なことはだいたいにおいて広告されません。何かあれば、医者か薬剤師の説明義務違反。
 大規模スタディしたわけではないので根拠はないけれど、日々処方している中で、例えば、某消炎鎮痛剤とか、某痛風治療薬などは、後発品の効果が先発品に比べて極めて悪いように感じています。ま、そういうこともあるので、極力「同じ材料だけど、必ずしも同じようには効かない」という説明をした上で、あとは調剤薬局で自由に薬を選んでもらってはいますが、「同じようには効かない」が理解されているかどうかはよく不明です。国がテレビ使って「同じ効果で安い」って言ってるんだから、多分普通の人はみんなそっちを信じます。あれは法的にどうにかなんないのか。

 例えば、「あの老舗高級料亭の味を完全再現! 全く同じ材料を入手して調理しました」と、近所の大衆食堂で広告を打ったとします。料亭の半分の価格で懐石料理を味わうとして、それはやはり食堂の味ですよね。もちろん、食堂で調理したほうがかえって美味しくなるという可能性は否定しませんが。まあ、高級食材を使うから、それなりに美味しいのだろうし、栄養価もだいたい同じなのでしょう。でも、果たして料亭と全く同じ料理が出せるかと言われれば、それは無理だと思うのが自然かと思います。料理に原価の何倍もの金を払うのは、その「料理」の過程を評価するからです。我々はしばしば、単に自分が料理をする手間を避けるという手間賃としては、遙かに高額を支払います。
 薬だって当然、同じ材料を、ただなんとなく混ぜれば、どの会社でも全く同じ薬ができあがってくるわけではありません。それなりにつくれば、「それなりの」薬が出来てくるのです。全く同じ薬が安価でできるのであれば、もはや先発品メーカーの薬なんて誰も買わないわけですが、そうはならないのは、やはり先発品にしかできないことがあるからなのです。全部が全部とは言いませんが。
 また、医薬品の情報提供をまともにやっている後発品メーカーにお目にかかったことがないというのは、多くの方が言われている通りです。何かあったら先発品メーカーに問い合わせろというところがほとんどです。
 これは、料亭と同じ材料を使った料理を出している食堂が、「まずかったらうちではなくて、料亭に言ってくれ」と言っているようなものだと思います。料亭にしてみれば、「そんなこと知らねえよ」という話でしょう。
 インチキ健康食品の広告はまだ許せるとしても、国が主導で「安くて『同効』」というインチキを煽るのはやっぱり許し難いですね。

追記

もう少し正確な話は下記URLに詳しいようです。
http://intmed.exblog.jp/1590715/
http://intmed.exblog.jp/4273763/
http://intmed.exblog.jp/4284064/