混合診療

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007082102042760.html
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静岡県藤枝市立総合病院の歯科口腔(こうくう)外科で、五年間に約一億二千二百万円の診療報酬の不正受給があったとして、厚生労働省と静岡社会保険事務局は二十一日までに、健康保険法に基づく同病院の保険医療機関の指定を取り消す方針を固めた。静岡地方社会保険医療協議会に諮問、答申を受けて二十八日にも正式決定する。
地域の医療拠点となる公立の総合病院が保険医療機関の指定を取り消されるのは異例。(中日新聞)

参照→ http://medt00lz.s59.xrea.com/blog/archives/2007/08/post_531.html
 これは悪質な不正受給という話ではありません。特に歯科においては、良心的な治療を行おうと思えば、保険内での診療では間に合わないということはずっと以前から言われていました。かといって、保険外の診療を組み合わせれば、混合診療となってしまい、もともとの保険的応分の治療にも保険が使えなくなり、患者さんの負担は相当なものになります。
 厳密にルールに則るならば、全額を患者さんに請求すれば良いのです。病院側は全く傷を負いません。あくまで、患者さんの負担を減らそうという善意を前提に、そのあたりはかなり曖昧にされていて、例えば保険診療としてレントゲンを撮影してから、自費診療として金歯を入れるというようなことが慣習的になされていたようです。
 歯科においては、一部の領域において、混合診療が例外的に認められていたこともあり、さらにこのあたりをわかりにくくさせていたように思います。いずれにせよ、線引きがかなり曖昧にされていて、なんとなく黙認されていたという部分はあったのだと思います(歯科保険診療に詳しくはありませんので、誤解があったら申し訳ありません)。
 とにかく、そうした慣習がいきなり覆されたわけです。
 その一方で、「混合診療禁止は違法」の記事が出てきたことに強い違和感を感じているのです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071107it08.htm
(もうリンク先の記事は消えています。)
参照→ http://intmed.exblog.jp/6412164/

混合診療」禁止は違法、東京地裁が国側敗訴の判決
 健康保険が使える診療(保険診療)に上乗せして保険外の診療(自由診療)を受けた場合、保険診療分まで全額患者負担になるのは不当だとして、神奈川県内のがん患者が、国を相手取り、保険を受ける権利があることの確認を求めた訴訟の判決が7日、東京地裁であった。

 定塚誠裁判長は、保険診療自由診療を併用する「混合診療」を原則禁止している国の政策について、「混合診療を禁止する法的な根拠はない」と述べ、原告に保険診療分の受給権があることを認め、国側敗訴の判決を言い渡した。

 日本の健康保険制度の前提となってきた混合診療の原則禁止を違法とした初めての司法判断で、厚生労働省は法改正を含め保険制度の見直しを迫られそうだ。(読売新聞)

 結局は医療費亡国論に基づく医療費抑制政策とか、民間医療保険権益に絡んだ財界の思惑の結果で、そのしわ寄せは経済的弱者に全部行っちゃうんですけれどね。ぶっちゃけ、医療機関としては、保険から医療費を頂くか、患者さんから医療費を頂くかというだけの違いです。
 世界に類をみないフリーアクセスと国民皆保険のシステムを破壊する方向へ歩んでいるということに気付いている人があまりにも少なすぎるように思います。