Proposition 8

http://en.wikipedia.org/wiki/California_Proposition_8_(2008)
 11/4のアメリカ大統領選の陰に隠れて、住民投票によって可決されたProposition 8をご存じでしょうか。これはカリフォルニア州で、同性間の結婚を廃止するための憲法改正案で、5月に同州最高裁が出した同性婚を認める判決を覆すものです。(同日、フロリダ州アリゾナ州でも同性婚禁止が可決されました。)
 異性愛というマジョリティの、異性間での結婚という「普通の」ことという感覚から、なぜ子供を作ることもできない同性間で結婚が必要なのかということを言う人間も多いし、そもそも同性愛自体を許容せず、嫌悪するという人も少なくありません。
 少し舌足らずですが、拙著「お医者のタマゴクラブ」に、かつて同性愛に関するエピソードを綴っています。
http://d.hatena.ne.jp/zaw/20030214#p1
 マジョリティとして生き、マジョリティのための制度に乗っかっている人間にとっては気付かないことかも知れませんが、結婚という届け出をすることによってのみ受けることのできる恩恵と、それをしないことによる不都合が数え切れないくらい存在するのです。血縁の子供を授かることのできない同性愛者にとって、パートナーとの関係を法的に認められることがなければ、法的な家族や血縁者というものがいなくなってしまう可能性があります。
 保険であったり、病院での付き添いであったり、その他様々な場面において、法的にパートナーであるということが重要な場面は数え切れないくらいあるのです。もちろん、異性愛者同士が、敢えて婚姻関係を結ばないのは選択の自由だと思います。しかし、異性愛者には「事実婚」のような扱いも存在します。また、婚姻をしないというのはあくまで「選択」です。
 残念ながら、日本にはまだ同性婚やパートナーシップの制度は存在しませんが、多くの国で権利として保障されています。さて、今回のこのProposition 8が異常なのは、すでに裁判所が憲法に基づいて同性婚を認め、何組もの同性パートナーが誕生しているのに、わざわざ憲法を改正してまでこれを覆したことなのです。住民投票の結果、52.3%がこのProp.8に賛成したのですが、これは、数の力で少数派の人間の権利を剥奪したということなのです。
 "CHANGE"を謳った次期大統領が選ばれた日に、皮肉にも個人の権利が剥奪される方向へ"CHANGE"が行われてしまったということは大いなる悲劇としか言いようがありません。
http://www.noonprop8.com/
http://www.noonprop8.com/about/who-opposes-prop-8
 しかし、「ロサンゼルス・タイムズ」や、「ニューヨーク・タイムズ」といったアメリカを代表する新聞や、GoogleAppleなどの有名な企業など、実に様々な団体がこのProp.8に反対の声を挙げているという希望もまた、存在しています。特にここで注目すべきは宗教団体だと思います。同性愛者の権利に強く反対している宗教団体への不信から、前述の「お医者のタマゴクラブ」にも宗教に対する不満を述べていましたが、今回、プロテスタント主流派、カトリックユダヤ教などの多くの団体が、Prop.8に明確な反対の声を挙げてくれているのです。
 西洋人にとっての宗教というのは、日本人にとっては想像に難い大きな存在でしょうし、そうした団体が権利を守る方向へ動いてくれているというのは、何よりも大きな力になっていることでしょう。