地方で

ここは退屈迎えに来て

ここは退屈迎えに来て

 はてな界隈でちょっと評判だったので読んでみた。この地方都市の描かれ方のリアルさにぎょっとする。まさに僕もそうした地方都市で、情報も選択肢もないままに暮らしていた。作者は1980年生まれとのことなので、ほぼおなじ世代。この文章にぎょっとさせられるのは、そうした世代のマッチもあるのかも知れない。
 僕の場合は、都会への憧れというのは、情報があまりにもないせいでむしろなかった。地元に国立の医学部があったらその世界の中で完結していたかも知れない。大学もまた田舎だったけれども、狭く完結したコミュニティから脱出してみていろんなことに気付いたのと、僕のちょっとした事情故に、今頃になって都会に出てくることになったわけだけれども。
 大学入学以降、僕の地元との繋がりというのは極限まで希薄になっていたのだけれど、最近facebookきっかけで十数年ぶりに中学の同級生と再会したりする機会があった。実家へ帰ったり、古い友人と再会するようなときに感じた哀愁とかトラウマとかもやもやとか、おんなじような感覚をこの短篇集から直球で受け取った。
 ある方が、正しく描かれているからといって救いになるわけじゃあないと思ったというようなことを書いていたけれども、僕も全く同じような感想を抱いた。