会社を経営する

 母親が何年か前に小さな会社を立ち上げました。ずっとパートで関わっていた業界で、前の職場で正社員にしてもらい、それまで経験のなかった営業職に従事、その時の人脈、ご縁に支えられて独立したのですが、我が家には人脈ということ以外に資産とか後ろ盾とか一切なく、会社の規模としても、出て行くお金を絞って絞って利益を出すというのが精一杯ではありました。そうはいっても、なんとか黒字を維持できるようにはなっており、おそらく母としては、自分の人生の仕上げとしていろいろ考えていることがあったのだろうとは思います。もともとは、母の一代限りで店じまいするつもりの会社でした。
 母の病気がわかった際に、当然会社をたたむとか、誰かに譲るといった選択肢もあったのですが、いろいろな話し合いの結果、僕が実質相続して今に至ります。正直なところ、単純に生活のためのお金を得るためには、医師免許という国家資格を使ってバイトでもしたほうがリスクも無いし、効率はいいんです。黙っていても利益がガンガン生まれるような会社ではありませんから、ただ抱えていれば当然会社の価値は目減りするし、倒産という可能性だってあるわけで、正直会社を抱えて維持するということの意味は、母の意思という部分、なるべく周りに迷惑をかけたくないという思い、わずかとはいえ現在会社で働いている人間の存在ということだけなんですよね。だけ、というか、それがもっとも大切なことなのかも知れませんけど。
 決算でした。
 母が亡くなるのにあたり、事前に話し合っていたように退職金を頂いたことなどもあり、今期の赤字は確定的だったのですが、退職金分を差っ引いても赤字であり、今後会社を続けていくのであれば、もちろん売上を伸ばすということは必要なのですが、短期的には出て行くお金を減らしていくしかない。そういうことに関しての気の重い話し合いをしてきたのでした。正直会社経営のノウハウなんてあるわけでなし、僕自身が先頭に立って業務に携わればいいというものでもない(冒頭に述べたように、僕自身の収入や生活に関しては医師免許に頼るほうが確実)という現状、手探りですが、もう少し踏ん張ってみるとしましょうかね。
 なんやかんやいってお金のことがストレスですよ。