統合失調症

統合失調症がやってきた

統合失調症がやってきた

 最近はテレビもほとんど観なくなりましたが、昔は観てましたので、ボキャブラ天国全盛期の松本ハウスもよく観ていました。当時から、ネット上などでは、ハウス加賀谷さんが統合失調症であるという情報が流れていたとのことですが、正直僕は知りませんでした。ボキャブラブームの終焉とともに姿を消した芸人の中の一人だと思っていたハウス加賀谷さんの闘病は本書で初めて知りました。
 精神疾患についての知識は、確かに学部時代に学びはしましたが、実臨床で関わる機会はそれほど多くなく、多くの身体科の医師にとっても、統合失調症というのは非常に関わるのが難しい疾患であり、理解も決して深く無いのが現状だと思います。統合失調症の人が観ている世界を、自分の言葉でしっかり表現しているものはそれほど多くなく(医師が聞き取ってカルテに記載したものは無数にありますが)、そうした意味で、本書は非常に興味深い一冊でした。実は少し前に、同じ統合失調症と闘った方の手記
ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)

を購入していたのですが、表現がいささかまどろっこしくて、今ひとつ入り込めず、まだ半分くらいまでしか読めていません。通読できていないので、後者の感想は読了後においておきます。
 前者に関しては、正直、キワモノ芸人が病気をネタに何か書いてあるに過ぎない薄っぺらい本なのではないかとも思っていました。普段あまり芸能人が書いたような本は買わないのですが、先に述べたように、統合失調症の当事者が自らの世界を表した稀有な一冊として購入してみたところ、一気に本に引き込まれ、通読しました。ハウス加賀屋さんという人をあの強烈な芸をする人としかみていなかったので、良い意味で裏切られたというところです。本質的には非常にマジメで頭の良い人なんだと思います。決して奇を衒わず、真っ直ぐに書かれた本文からそれが伝わってきました。良い本でした。