10:30p.m.「動物実験と私」-0063-

 教養の生物学でカエルを殺し、ユスリカを殺した。薬理学でマウスを断頭して殺し、エーテルで殺し、犬を安楽死させた。分子病態学でマウスを殺して脳を取り出し、外科の移植実験で犬の死体を運んだ。もちろん、細菌学では大腸菌やらなにやらを使ったし、数え上げればきりがない。

 そんな殺生を重ねた上に私はあるが、「かわいそうだ」という気持ちは常にあった。…大腸菌には抱かなかったが。「動物実験反対」という気持ちもわかるし、感情的理由だけで反対したくなる気持ちも分からなくは無い。また「動物実験反対に反対」という気持ちも、私が今いる立場、そして将来身を置くであろう環境を考えると、分かる部分はある。ただ、犬はかわいそう、ならウサギならどうか、カエルなら、マウスなら、ユスリカなら、大腸菌なら…とかいう論争は、何の意味も為さないような気がするのだ。はい、そうです。私はたくさんのイノチを奪って来ました。たくさんコロシて来ました。

 食べるために殺すことを挙げて、実験を正当化するのも論点がずれている気はする。実験は実験の枠組みだけで考えるべきだ。生化学ではウサギの耳を傷つけて血液を採取しました。犬にケタラールを打って、筋肉を弛緩させるのにも慣れました。

 結局自分が一番かわいいわけで、自分の生活が最大限保証された上で、ほかの生き物を思いやる心も生まれてくる。自分の生存が脅かされるなら、躊躇い無く周りのものを殺めるだろう。笑って狼のエサになるほど、僕らは悟りきっていない。

 化粧品のための実験はダメだけど、薬のための実験ならいいとか…そういうことを言うと本当にきりがない。ただ、私は恐らく動物実験というものを拒否せずに続けてしまうだろう。まだ学生で、これを自信を持って肯定する裏付けも、頭ごなしに否定するだけの倫理観も持ち合わせていないだけ。いちばんずるいまとめ方だけど。

 明日は10:30から耳鼻咽喉科のテスト。これから勉強。1月も終わりだ。