「医の閉鎖空間」-0071-

 過去問頼りのテスト勉強、否定される覚えはない。記述形式とマルチプルチョイス形式では、押さえどころも変わってしまう。マルチョイでは、例えば「○○に××は効かないことが多い」というのが本当なのかどうか判断を必要とされるのだが、その判定は微妙なことが多い。講義で触れていなくても、良く用いる治療法であることもあるし、教科書に「××をよく用いる」と記載されていても、そのデータが古いこともある。過去問に出ているあたりから押さえないと、そんな細かいことを覚えるのは不可能だ。国試と違って、実は解のでない、不適切問題がわりと多かったりもするのだ。

 まあ、とにかく産婦人科も終わった。明日の臨床薬理学で、ちょうど半分。いまいち実感もないのだが。後期のテストは、いわゆる「マイナー」と呼ばれる分野である。最初、メジャー、マイナーという呼び方は俗なものかと思っていたが、国試の出題もメジャーから云々、マイナーから…と使われる。マイナーって響きには、どうも負のイメージがつきまとうんだけど、気のせいなんだろうか。

 そういえば、鉄門倶楽部の出世頭は東大メジャー診療科(内科・外科)の教授、次点がマイナー科もしくは基礎の教授、そして旧帝大の教授、その他の教授…開業医は最下層なんてことがかつて公言されていたようだが、どうなんですかね。他学部が、企業、省庁などにポストを求めることが出来るのに対して、医学部卒で求めるポストは、医学部教授しか無いという考えに大きく支配されているらしいが。

 まあ、確かに医学部生は、医学以外の道で潰しがきかないのだろうし、だからこそ、医者だけで固まって医局を形成したり、思えば学生のうちから、スポーツの大会ですら、「東医体、西医体、全医体」と、「医学部医学科」生しか参加できないものが最大の大会だったりする。結局、他の参入を許すと、負けてしまうから、身内で固まって喜んでいる…といった面は否めない。

 医学部って、ほら、こんなに大変なんだよ。勉強したくない人は入らないほうがいいよ。辛いことがいっぱいあるよ。…ってなことを声高に主張して、裏返しに自分はなんて偉いんだ、こんな苦労にも打ち克って、自己犠牲的に医者をやるんだってことを見せているところ。分かる部分もあるが、やっぱり気持ちは良くない。…これは自戒の念を込めて。でも、たまにそういう愚痴をこぼしたいこともあるんだよね、なるべく気を付けてはいるけど。それと同じくらい、やっぱり、いわれのない攻撃に腹を立てもする。適当に親のスネかじって学生やってれば、将来お医者様って呼ばれるんだから…なんて評価も、本当に、すごく遠いところを見つめている人間には気にもならないんだろうが、凡人である私は、すぐ腹を立てちまうんだよね。

 学校で朝日を拝む生活は、もう少し続くのである…