「塩酸アマンタジンとバイアグラとグレープフルーツジュース」-0074-

 インフルエンザで苦しんでいた友人が、先週末に処方された薬が「塩酸アマンタジン」。これ、日本ではパーキンソン病薬としてのイメージしかなかったのだが、どうやら、アメリカなんかでは、もともと抗ウイルス薬として用いられていたようだ。日本でも、昨年11月にインフルエンザ薬として承認されたようだ。

 結局塩酸アマンタジンが副作用として痙攣なんかを誘発するのは、「ドパミン放出を増大させ、黒質ニューロンドパミン作用性神経終末への再取り込みを弱める」という、パーキンソン病治療に欠かせない作用が関わってくる。パーキンソン病は、脳の黒質ドパミンが作れなくなることにより起きる。

 受け取るイメージというのも重要で、塩酸アマンタジン、このパーキンソン病に使う薬であるというイメージがあまりにも強いため、インフルエンザ治療に使うということに抵抗感を覚えることがあるようである。無理もない。インフルエンザウイルスに対して用いる時、さっきのドパミンなんたらの作用は副作用となる。パーキンソン病に用いるときは主作用である部分が、そのまま副作用となるわけだ。

 ところで、抗ウイルス薬としてのアマンタジンの作用は、A型インフルエンザウイルスに対し、ポリメラーゼ活性やRNA合成の阻害作用がある。まあ、要はウイルスが複製できなくするってところ。最も、日本で認可されていなかったため、当然我々は、アマンタジンの抗ウイルス作用についてはろくに学んでいないが、今後は、インフルエンザ治療薬として講義でも触れられるのだろうか?

 バイアグラなんかにいたっては、異例のスピード認可。昨年度までの講義では、名前すら出てこなかったし、当然教科書にも載っていなかった。今年度、泌尿器科の講義で「数年後には認可されるでしょう」という、まあ、雑談としてバイアグラについて触れられたが、それからたかが数ヶ月で、認可されてしまった。

 バイアグラでの死亡なども報道されたが、薬の相互作用というのも侮ってはいけない。例えば、抗癌剤として広く用いられるソリブジン、これをフルオロウラシル系薬物と併用すると骨髄抑制による汎血球減少が起こり、死亡例もある。これについては、日本で癌告知がすすんでいないことも問題となり、ソリブジンを、「胃薬」と信じて飲んでいる患者に対し、医師が、患者のソリブジン服用を知ることができずに、フルオロウラシル系薬剤を処方することがあるわけ。同じ病院、同じ医師がその患者さんを診るわけじゃないから。身近なところでは、グレープフルーツジュースで薬を飲むと、消化管の代謝酵素を阻害してしまう…とか。水で飲もう。

 薬学部というところに興味がある。一体どんな講義を受けているのだろうか。医師も当然薬の知識は必要だが、薬学を専門としている人々の知識にはかなわない…。やはり、院外処方と、かかりつけの薬剤師という存在が、薬害防止のためにも必要となるだろう。