「白衣を着る」-0111-

 行きつけのパスタ屋で飯を食っている最中に、某同級生が椎名林檎のいとこだということをきいて恥ずかしいリアクションをする。「マジ?」とか大声だしてみたり。あと有名人の血縁と言えば、DA PUMPYUKINARIのまたいとこという女性が存在するが、またいとこっていうのがどれくらいの血縁なのかはいまいちピンとこない。彼女は、「沖縄だから、結構親戚大人数集まるから、正月とかには会うよ」って言っていたが、そんなもんか。YUKINARIはどうでもいいが、林檎姫は間近でみてみたい気もするってつぶやいたら、O嬢に思いっきりひかれた。別にいいじゃん、会ってみたいと思ったって。

 物心ついてはじめて生で見た有名人って、ノッポさんかも。といっても、NHKでガラス越しに撮影現場を見ただけだけど。ゴン太くんもいました。イナカ者だから、有名人に過剰反応するかも。なるべく平静を装おうとしてるのに、どもっちゃったりして。

 部屋の隅では、一着しか持っていない白衣は乱暴に袋に詰め込まれて、聴診器は冷たくなってその横に埃をかぶっている。クリーニングに出し忘れた青いワイシャツがセーターの横に置いてある。机の下からだいぶ前に飲んだスパークリングワインのコルク。

 同い年の新入社員たちが歩く姿も、駅のほうまで行かないとお目にかからないし、丸の内の人混みは、あくまで違う次元の出来事。囲まれた山からまだまだ強く吹く風に負けて、ついつい自転車をあきらめて車に乗り込む。真っ暗な道にヘッドライトが桜と散歩中の犬をうつす。いつもと変わらない光景。僕らも、半分だけ社会に出る。

 白衣の意味を考える。白衣は、不衛生なものから自分を守るために着るものだから、患者さんのために着ているんじゃなくて、自分のために着ているにすぎない。そんなことを知ってか知らずか、5年生になる僕らも、外からみたら医師たちと全く同様の格好をして、外界のいろんなものをシャットアウトし、白衣の内にいろんなエゴを封じ込める。