「あなたは不潔なわけです」-0150-

 朝も6時頃に頑張って起きて、ネクタイ締めて、おにぎり買って、それでも病棟の中ではすでに医者たちが忙しそうに動いてる。今日入ったオペは生検とは言え、神業の40分スピード完了。患者さんを抱えてベッドからベッドへ。ナースコールもひたすら鳴り続ける。ひたすら研修医にくっついて歩いていると、結局一日中あっちこっちへ歩き回っていることになる。

 今日、手洗いして、清潔なオペ着を着てオペに臨むも、肩の部分が不潔な人と触れてしまったため、オペ着を換えにいったん外へ。「清潔」という特別な状態以外は全部不潔であって、三回ブラッシングして、オペ着を看護婦さんに着せてもらい、二重にコーティングされた手袋の外側の部分を開けてもらって、内側だけ受け取り、左側の内側に手を通したあと、手袋をした左手で右側手袋のひっくりかえった部分に4本指を入れ、右側を完全にはめたあと、その右手で左側のひっくりかえった部分をきちんと伸ばす。で、途中失敗するとやり直しなのだ。

 結局2回目に着ようとしたオペ着は、看護婦さんが清潔部分に触れてしまったため、もう一度新しいオペ着を着せてもらったのだが、今度は自分で結ばなくてはならない清潔部分のヒモを不潔部分に触れさせてしまったのでさらにやり直し、その間、肘が、清潔なオペ着の下に着ている不潔なオペ着に触れてしまったので、もう一度手洗いからやり直したのだが、すんごく気まずかった。別にだれも見ちゃいないけど。

 医学の歴史なんてたかが知れてるが、ちょっと前までは、感染の概念なんて全く無くて、手なんて洗わずに平気でオペしてたんだなあ、なんて思ってみると感慨深い。本気でちょっと前には注射針なんて何人も使い回してたんだよなあ、なんて思ってみると、また感慨深い。電気メスが普及した今、普通のメスはどうにも切れ味が悪いという印象だが、1000万円もかけて研いで貰ったブラック・ジャックのメスの切れ味ってどんなんだったのかなあ、なんて思ってみると、なんだか楽しかった。