「言霊」-0370-

 頭の中に渦巻く事全てを、言葉だけで正確に表現することはできないでしょうね。ただ、思考というプロセスに至ると、僕らは何らかの言語、場合によってはグラフィカルなイメージを併用しながらその思考を組み立てて行き、外界に向けてそれを表現することは可能です。

 同意とか批評とか反論とか、そういうことを全く期待しないで、ただただその思考を表現したいことがよくあるのです。すなわち、他愛のない会話ってやつがそれでしょうか。ただ聴いてもらうということだけでその目的を十分果たすのですよ。渦巻いている何かに、言葉を与えて意味をもたせ、それを表現したということだけで満足する部分があるのです。もの凄く非生産的かも知れませんが、言葉として吐き出す行為って、その行為自体が凄く重要だと思うのです。あるいはウェブ上に記す日記も、特になんらかの反応を求めているわけじゃなくて、単に自分の言葉を吐き出すという目的も大きなウェイトを占めているかも知れません。

 そして例えばテスト前とかいう割と鬱々した精神状態の時、電話で話すといったようななんでもないことが、予想以上に気持ちを軽くするんですよね。ある同級生はかつて、「敢えて同じようにテスト前である同級生に電話をすれば、少なくともその時間分、そいつの勉強時間を減らせて効果的だ」とか冗談混じりに言っていました。しかし、追いつめられた状態で、同級生に電話をしたりしても、そうそう嫌がられず、かえって相手は相手でなかなか切ろうとしないというのは、やはりみんななにかを吐き出すということに飢えているからでしょうか。