「血をください」-0422-

 緊急オペ(手術)に際して、輸血部に当直はいないので、必要になるのがクロスマッチ(交差試験)隊で、大抵僕ら新人がその任務に就くのですけれども、それ以前に必要なのがMAPとかPCとかいった輸血たちなのです。普段ピザの出前のような気軽さでオーダーしまくっている手前、献血センターのバイトを断るわけにはいかないのです。

 昨日は一日中、駅南口の献血センターに詰めていたのです。問診したり血圧はかってみたり、気持ち悪くなった人の様子をみたりなんかしていたのですが、実質システムはそこにいる人々でほぼすべて滞りなく動いており、単に資格としての医師を欲している感は否めないのです。

 そういう意味では、手術や手技を学べるわけでも、新しい医学知見に触れられるというわけでもないために、得るものが少ないのですが、普段はあまり関わらない、健康な人々に、いろんな世代の人々に接することができるというのは貴重かも知れません。

 献血と輸血供給のシステムは、日赤がそれで不当に利益を得ているとやり玉にあげられたり、問診の項目に、差別的な内容を含むと指摘されたりと、種々の問題を抱えていることは確かで、その点の改善は必要だと思いますが、とにかくこのシステムが無いと話にならないのも事実です。

 僕の志す外科という領域も、輸血無しには考えられません。もちろん、感染に対しての知識も増えており、また、体腔鏡を使った縮小手術の普及などから、輸血を必要としない方向への流れは存在します。

 ところで、大学で学ぶ僕の後輩たちは、多くが現在試験中です。手当たり次第に、携帯のメールで献血に誘ってみたのですが、「試験中のこの体調で血をとられたら倒れる」とのことで、結局一人も来てくれませんでした。しかし、こういうきっかけだとか、献血が趣味のような常連さんなどが無かったら、明日にでも手術が滞るに違いありません。