「二重造影」-0423-

 僕の方は、気がつけば半年もバタバタ働いていて、どうにか採血くらいは学生に指導するくらいの余裕を見せ始めてみても、穿刺針がすり減るほど何度もIVH(中心静脈栄養)指してみたり、小腸まで造影剤が流れ込んでしまった渋い注腸造影写真なんか撮っている研修医ぶりですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 半年も病院で働けば、何人もの死に立ち会うことになります。もしかすると人の死に対する感覚が少し鈍ってきているかも知れないと思うのです。最近、チームの他の医師が不在の状態で、いよいよという末期癌の患者さんの家族に連絡をとり、個室に移して親族と共に見送って、死亡診断書を書いてみたりとかしたことは、僕をいくらかは成長させてくれたのでしょうか。

 自分なりの信念と勉強で、先輩医師や先輩看護婦たちに対しても、時には強く意見するというその行動自体を、あまり好まない人がいるということは承知した上で、しかし僕の僕たる根底にある頑固さは変わらぬまま、とにかくここまでやって来ました。自分が人間的に許せないことまで許容して、他の医師や看護婦・士にあわせる必要は無いと思うのですが、確かにある医師に言われたように、頑固さのせいで医療チームがうまく動かないせいで、患者さんに不利益が出ることもまた問題なのです。僕は僕なりに今、このバランスを探しているところなんです。

 もちろん口ばかりでなくて体が伴わなければなりません。特に外科という世界。文句のない実力が伴った上で、初めて自分の意見が通る部分も大きいでしょう。美しい注腸が撮れる頃には、また何か変わっているだろうと思うのです。