「手技」-0456-

 小児科医と一緒に当直をしていた時に、「外科っていうのは、できる手技や手術が増えていくことで、成長していくのが目に見えてわかるけれど、小児科っていうのは、何年たっても点滴するくらいだから、変化が感じられなくて。内科の先生も、内視鏡とか覚えていくわけだし。羨ましいですよね」と声をかけられたのでした。

 毎日術前検査と術後管理に追われ、その合間の手術では、相変わらず下手くそな鉤引きをして怒られたり、自身無さそうにヘルニアの執刀したりしているのだけれど、何か少しくらいは成長しているのかも知れません。英単語100個一夜漬けで覚えてテストの得点アップは可能だけれど、素振り100回の一夜漬けで野球は上手くなりません。昨日と今日のメスさばきにはそんなに差がないかも知れないけれど、来月はなめらかにメスを滑らせることができるかも知れないと思って頑張るのです。

 今でこそなんなくこなしている手技の中でも、考えてみれば、去年は採血ひとつするのにもドキドキしてみたり、点滴失敗して助けを呼んだりしていたわけで、そう考えると、やっぱり数をこなすことは重要で、失敗も成功もすべての経験が貴重な素振り1回になっているのだと思います。

 臨床あってこその医学だと思うので、現時点では、学位とか研究とかにそんなに興味があるわけではないのだけれど、時にアカデミックなことをしてみるのも、変化を感じられて面白いのです。次の学会のために、大学に通ったり、組織の写真を検討したり、症例や論文を集めたりしていると、そうした臨床のための根拠作りもそれなりに面白く感じるのでした。