「記憶」-0536-

 結婚式ラッシュ。

 日曜日は京都駅にくっついたホテルで行われた結婚式に招かれたのでした。新婦が大学の同級生。他に誰が来るのかよく知らなかったのですが、久しぶりの同級生と思いがけず再会したのでした。さらに新婦が学生時代入り浸っていた教室の教授が招かれていました。乾杯の挨拶は、まるであの日の講義のようで、まさか、母校から新幹線を2本乗り継がないとたどり着けない京都で、あの味のある講義を聴くことになるとは思わなかったのです。しかしとても懐かしく、京都タワーに中高の修学旅行の思い出が蘇らなくても、友人との再会は、とたんに鮮やかな記憶を蘇らせるのでした。

 乾杯の挨拶をした、母校の教授は今年退官で、学内には最終講義のお知らせが貼ってありました。僕はその日は外勤当直日で、「せっかく出掛けていって最前列に座って、先生にプレッシャーをかけようと思ったのに」と告げると、教授は「そうか、それはよかった。お前のいない日に設定してよかった」と、僕も教授もかわらぬ憎まれ口なのです。その教授は僕の入試の時の面接官のうちの一人で、僕はその面接のときの様子を鮮明に覚えているのだけれど、教授もまた、それを覚えていて、ことあるたびに話題にするのです。結婚式の挨拶で、新婦の入試の採点について語ったり、最終講義の演題に「入学者選抜の反省」なんて持ってくる医学部教授は、他にいるのかどうか気になるところです。

 教授会に食ってかかるような意見書提出をしてみたり、無駄に熱かった学生時代。それを疎ましく思うか、全く相手にしないかというのが、教授連の正直なところだと思うのですが、そういう行為を面白がってくれた希有の人です。いずれ本になった「お医者のタマゴクラブ」を進呈しようと思っていたのに、まだ渡さないままになっていたので、少なくとも最終講義までには届けるようにしようかと思っているのです。