「カドをたてて!」-0538-

 月・水・金が大学での手術日なのですけれど、そのいずれも予定が飽和状態で、昨日僕の絡んだ手術は4件もあって、最後の手術は予定手術なのに夕方6時スタート。その日3件目と4件目の手術は10分ほどの時差入室で、しかも夕方5時をすぎて日勤看護師の業務終了したということで、器械出し(手術道具を渡す係)がつかないという状態。そんなこと言うなら僕らもとうに勤務時間外なのですが、そんなこと言っても始まらないので、どうにか最低限の人数確保して、並列で手術開始。連日そんな状態で、この寒い季節に、いつも帰宅は午前様です。

 そんな無理な予定入れるから、と手術室の看護師長は言うのですけど、僕らのわがままでたくさん手術入れてるわけじゃなくて。昨日あたりは、僕らの科だけじゃなくて、他科ももの凄い数の予定手術を入れていたようです。たぶんこの予定飽和の一因は、ハッピーマンデーだと思います。曜日限定の予定というのが、僕らの社会にはいろいろあるのです。大学ではそれが手術日だったり、専門外来日だったり、検査日だったり。月曜日が外勤日で、そこでの収入に生活がかかっている人なんかは死活問題だったり。

 だけど僕はその合間を縫って、またライブを演る予定です。飲み屋での酔っぱらいジャズ演奏に始まり、市の七夕祭、学園祭での軽音楽ライブ進出を経て、次回大学のクリスマスライブに参加決定。なんだかんだ言ってみんな結構好きなことが判明したので、今回も七夕の時と同様、「ゆらゆら帝国」のコピーを演ることになりました。

 いまいる大学の外科での勤務は今月でお終いなんです。そのせいかどうかよくわかりませんが、このところ立て続けに大腸癌手術を執刀させてもらっています。まだまだ指導医の操り人形かも知れませんが、ただ忙しいだけではない充実感があるのです。大好きな音楽もなんとか続けていて、これにもたくさんの大切なものをもらっています。バンド仲間のほとんどに、僕の僕としての生き方を知って貰っていて、それにもとても助けられているのです。

 4月以降、遠き九州の病院勤務になるかも知れないということについて、オンライン・オフライン問わず様々な反応をもらっているのですが、僕らの人事が決定されるのはいつもぎりぎりで、結局2月とか3月とかまで決まらないことも多いのです。僕が希望するか否かということが若干の判断材料になるにせよ、最終決定は結局、医局人事なので、僕はじっと待つしかありません。

 医者としての長い生活の入り口あたりを彷徨っている僕は、この先どういう方向へ向かうのかわからないけれど、僕のルーツとか拠り所とか、そういうものを、僕の親しい人々に感じ始めています。なんだろうか、弱くなったのか。強くなったのか。かつて酒席でも僕の中で何かを強固に守っていて、そのせいで酔いも遅かったのですけれど、最近、仕事を離れて心を許せる友人たちと杯を交わすとき、僕はすぐに酔っぱらってしまうのです。20代後半にもなってとても青臭い話ですけど、僕は今になって初めて、「親友」とか「優しさ」とか、そういう言葉をその意味のまま捉えることができるようになったのかも知れません。

 穏やかになった、と言われるのです。でも僕は、転がる石が角を削って丸くなるような生き方はしたくなくて、同じ丸くなるにしても、角を増やし続けて丸くなって行きたいと思うのです。「多角形になればなるほど、円に近づきます」と発表したのは、小学生のときでした。前にも同じこと日記で書いたと思うけれど、いつだったか覚えていません。僕はその時にも僕だった、ということ。

 まとまらないけど、そんな感じ。