「エルステ・マーゲン」-0539-

 なんとなく大腸・肛門に経験症例が偏っていたのですが、先週の月曜日、思いがけず初めての胃癌手術の執刀をさせてもらったのです。Erste Magen、たぶんドイツ語としてはおかしな使い方なんだと思うのですが、僕らの業界では、最初の胃切経験をエルステ(最初の)・マーゲン(胃)と言っています。

 しかし、教授は僕が何度か胃切を経験していると思っていたらしく、初めてなのにいきなり「胃全摘」の症例だったのです。僕は今年3月に、北の日赤病院を辞して、大学で半年間ICU、その後大腸・肺・乳腺・甲状腺のチームを中心に受け持ち、術者の経験というよりもまず、胃の手術自体をみるのが実に9ヶ月ぶりという状態だったのです。

 胃チームのチーフに前立ち(第一助手)して頂き、操り人形のようになんとか右胃大網動静脈処理までさせてもらったところで、教授がいらっしゃって、しばし教授と胃チームチーフで執刀をすすめ、小腸パウチのつくりかたを教わり、空腸−空腸をGambee吻合。

 しばらく消化管の手術は大腸・直腸しかみておらず、腸の手術は非常に平面的なイメージがあるのに対して、胃の手術は立体感と膜のイメージが大腸のそれよりも強くて、展開が新鮮で楽しかったです。鉤引きの位置からは見えなかったり、実際に手を出してようやくイメージを掴みかけたブルゼクトミーなど、貴重な経験をさせてもらいました。できれば、胃全摘術よりもまず、胃切(幽門側胃切除といって、胃の下半分以上をとるけれど、全部はとらない手術)を経験してみたいと思っていたところ、明日の胃切を執刀させてもらえることになり、興奮しているのです。

 外科病棟勤務、労働条件は決して良いとは言えないのですが、やはり僕は外科の仕事が好きだし、指導医の操り人形状態であったとしても、手術を執刀させてもらえるというのはとても嬉しいのです。

 合間には、軽音楽部のクリスマスライブに混ぜてもらったり、リフレッシュすることもできたし、もう少し外科の仕事をがんばってみます。病棟勤務は今月いっぱいでとりあえずおしまい。年末は怒濤の当直・外勤ラッシュ。1月からは3ヶ月限定で麻酔の勉強をするため、大学の外にでます。