「論文予定表」-0559-

 人事を決める前に毎年行われる「教授インタビュー」という儀式において、「正直、僕はまだ、研究には興味が持てません。臨床のことだけ考えて働いてみたいです」と言ったのです。教授は「まあ、それならば、今年はそれで良し」とおっしゃったのです。

 僕はとりあえず、最低一年間は、研究のことはあまり考えないで、とにかく外科臨床に携わることになったわけです。でも、それは世の研究というものを無視するということではなくて、自分自身が研究に直接関わらないとしても、日本の、世界のアップデートな知識を知っているということは、臨床をする上で不可欠なことです。

 ですから、学会誌や医学雑誌を斜め読みしたり、研究会に出席したりすることで、最新の医学知識に触れているように努力しているのです。医者があまりいない地域では、外科開業医のところで、多くの内科疾患の患者を抱えていたりして、タイミングによっては、僕の外来でずっとフォローアップされている糖尿病患者が存在しうるので、一般的な疾患については、特に専門をこえて学ぼうとしています。血糖下降剤も降圧剤も星の数ほど存在して、その組み合わせとか、治療のトレンドは渋谷の街のように気紛れなのです。

 さて、毎年この時期には、大学から「論文予定表」の提出が求められます。昨年はなんとなく無視していたのですが、今年も提出せずにいたら、矢のような催促が来たのです。来年度の外科臨床生活の後、大学院入学を強くすすめられていることなどもあり、論文なんかはその時でいいだろうと思っていたのは僕だけで、大学はそう考えてくれないようです。

 学生の時に「食道パピローマ」の症例報告を英語で書いた論文が、いまだどこにもアクセプトされないで転がっていたのと、一応論文を書くことも考えて、資料や関連論文がほぼそろっている「肛門パジェット病」を、とりあえず予定として提出してみました。僕にとって、四月の外科復帰は、外科医としてのリハビリ期間であり、認定医を受けるために必要な、あと1年の修練期間であり、いずれ突入するかも知れない研究生活の準備段階となるようです。

 まあ、それはそれとして。古い友人たちの変態ライブイベントがあるので、今日はそこへ行こうと思ってます。