デスマーチ、か。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20070129
http://iwatam-server.dyndns.org/software/devintro/deathmarch/deathmarch/

デスマーチが進行すると、そこに適応できない人の士気が低下し、適応できた人の士気は向上します。この差がトラブルを引き起こします。ハイになった人にとって、なぜこの期に及んでやる気をなくしている人がいるのかが理解不能なのです。

 多分、僕が大学院生などという身分になり、自分のおかれた立場を冷静にふりかえる時間が与えられなければ、あるいは、夜間・休日も働き続けるという体力的な負担のみならず、精神的にも相当な負担を加えるような医療バッシングがここまで進まなければ、「忙しいことが誇り」とばかりに、外科という軍隊の中でそれほど疑問も感じずに働き続けていたのだろうな、と思います。

デスマーチは外から見ていると非常に恐しいものです。「あの人たちは過労で死にやしないか」とヒヤヒヤします。そして実際に死人すら出ます。しかしそんな戦場を何度も経験してそれでも脱落しなかった優秀な兵士にとってみれば、これは日常であり、疑問にすら思いません。「戦場とはそんなものだ」で済んでしまうところに本当の恐しさがあります。

とありますが、こと医療に関してのみは、外から見ている人もあまり過労を心配せず、むしろ「特別な存在なのだから、文句をいわずに働け」とむちをふるっています。そして、一組織や一業種の中で完結することなく、社会の中で要請されたデスマーチだからこそ、単に「価値観が違う」というだけで片づけるわけにもいかないのです。

 「ここで頑張って仕事しても無駄だ」と思われたら、どんな説得も脅しも効を奏しません。「奴の言うことはデタラメだ」と思われたら、何を言っても本人の耳には入っていきません。精神論には論理性がありませんから、何を説いても「体育会系バカが何かわめいている」と思われるだけで、本人の耳には入っていきません。

 せめて、あまり追い詰めず「価値観が違う」で片付けてあげてください。そうすればせいぜい会社を辞めるくらいで済みます。そうでなければ、おそらく自殺にまで追い込まれるでしょう。

「せめて、あまり追いつめず」というパラグラフが、部下にかかるのか上司にかかるのかわかりにくいのですが、いずれにせよ、こうして「辞める」という行動を取り始めたのが「立ち去り型サボタージュ」「逃散」と呼ばれる行為であり、自殺に追い込まれてしまった代表例が、中原利郎先生のケースです。

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakahara/sub5jian.htm

間もなく21世紀を迎えます。
経済大国日本の首都で行われているあまりに貧弱な小児医療。
不十分な人員と陳腐化した設備のもとで行われている、
その名に値しない(その場しのぎの)救急・災害医療。
この閉塞感の中で私には医師という職業を続けていく気力も体力もありません。

 そして、それでもなお、ハイな医者は少なくなく、デスマーチを煽る世論もまた然りです。
 福島県立大野病院の事件についての公判が始まっています。この期におよんでなお、福島地検側は

公判終了後、「我々としても医療関係者が日夜困難な症例に取り組まれていることは十分認識している。しかし、今回の事件は、医師に課せられた最低限の注意義務を怠ったもので、被告の刑事責任を問わなければならないと判断した」とする異例のコメントを発表した。
(朝日新聞、2007年1月27日)

とコメントを発表しています。まあ、起訴してしまった以上そういう立場をとるしかないのかも知れませんが、医療界が理論的に猛反発しているこの件を、あくまで「医師に課せられた最低限の注意義務」とする神経が、やはり僕には理解できません。

大野病院関連過去ログ

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060303#p1