大野病院事件・最終弁論

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 5/16に弁護側の最終弁論が行われました。ロハス・メディカル ブログから、弁護側の総括を引用させて頂きます。

「本件起訴が、産科だけでなく、我が国の医療界全体に大きな衝撃を与えたことは公知の事実である。産科医は減少し、病院の産科診療科目の閉鎖、産科診療所の閉鎖は後を絶たず、産む場所を失った妊婦についてはお産難民という言葉さえ生まれている実態がある。

産科だけではない。危険な手術を行う外科医療の分野では萎縮医療の弊害が叫ばれ、その悪影響は救急医療にまで及んでいる。

医師会をはじめ、医学会、医会、全国医学部長・病院長会議等100に近い団体が本件事件に交ぎする声明等を出している。医師の業務上過失致死事件について、各種医療団体から多数の抗議声明等が出されたことは、我が国の刑事裁判史上かつてないことである。

このような事態が生じたのは、検察官が公訴事実において、我が国の臨床医学の実践における医療水準に反する注意義務を医師である被告人に課したからに他ならない。

検察官が、本件裁判において度々言及しながら遂に証拠請求すらしなかった県立大野病院医療事故調査委員会作成の報告書は、起訴前から広く医療界に知られていた。抗議声明等を出した医療団体は、被告人が術前には癒着胎盤の認識を持っていなかったこと、胎盤剥離中に癒着を認識したこと、剥離を継続して完了させたが止血ができず患者が死に至ったことを知ったうえで、それを前提に抗議声明等を出しているのである。

検察官は論告において、『胎盤の剥離を開始した後、癒着胎盤を認めた場合には止血捜査に努めると同時にただちに子宮を摘出するという知見は、基本的な産婦人科関係の教科書、基礎的文献に記載されている産婦人科における基礎的知見』と主張する。証拠となっていないものも含め、胎盤剥離開始後に剥離を中止して子宮を摘出するという記述はない。

また前述の通り、本件で証拠となったすべての癒着胎盤の症例で、胎盤の用手剥離を開始した場合には、胎盤剥離を完了していることが立証されている。これが我が国における医療の実践である。胎盤剥離を開始して、途中で中止し、子宮を摘出するという医療が、我が国の臨床医学の実践における医療水準や標準医療でないことは証拠上明らかである。

(中略)

被告人は、厳しい労働環境に耐えて、地域の産婦人科医療に貢献してきた優秀な産婦人科医である。

懸命の努力にもかかわらず、担当した患者を死なせてしまった被告人の無念さと悲しみは、当公判廷で被告人が供述する通りである。

被告人は真摯に本件患者の死を悼み、度々本件患者の親族に頭を下げ、本件逮捕に至るまで月1度の墓参を欠かしたことはなかった。このような事実は、被告人の医師としての誠実な態度と真摯な姿勢とを如実に表すものである。

本件患者が亡くなったことは重い事実ではあるが、被告人は、我が国の臨床医学の実践における医療水準に即して、可能な限りの医療を尽くしたのであるから、本件に関しては、被告人を無罪とすることが法的正義にかなうというべきである」

 判決公判は、8/20午前10時より行われる予定。無罪以外の判決は到底認められないし、万が一有罪の判決が出たならば、我が国の司法に絶望するのみです。

大野病院関連・過去ログ

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060303#p1