割り箸事件、その後

<割りばし事故>医師、2審も無罪 東京高裁(毎日新聞【伊藤一郎】) (魚拓)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081120-00000067-mai-soci

 東京都杉並区で99年、保育園児の杉野隼三(しゅんぞう)君(当時4歳)がのどに割りばしを刺して死亡した事故を巡り、業務上過失致死罪に問われた医師、根本英樹被告(40)の控訴審判決で、東京高裁は20日、無罪とした1審を支持し、検察側控訴を棄却した。阿部文洋裁判長は「脳の損傷を想定するのは極めて困難だった」と述べ、1審が認めた治療の落ち度を否定した。

 ◇母文栄さん「隼三の死、無駄にしないで」

 「隼三の死が無駄にならないよう、医療に携わる皆様が努力してくださることを願います」。判決後に会見した隼三君の母文栄さん(51)は風呂敷に包んだ隼三君の遺影を抱きしめ、声を絞り出すように語った。「1審は過失を認めてもらえた。今回は納得のできない結果です。一言の謝罪を求めた9年間でした。『もう少し丁寧に診察すれば良かった』と言ってもらえれば苦しい闘いはなかった」と悔しさをにじませた。

 ◇公正なシステム構築を

 医師に無罪を言い渡した20日の東京高裁判決は、捜査当局が医療事故の刑事責任を追及することの難しさを改めて示した。専門性の高い医療分野での事故を捜査対象とすることには、医療界の反発も根強い。事故原因を究明し、再発防止策を講じる第三者機関の設立など、医師と患者の双方が納得できる公正なシステムを構築することが急がれる。

 他の報道が比較的無罪判決を淡々と述べているのと比べ、やはり毎日新聞はひと味違う。これは痛ましい事故には違いないが、誰かのせいということではなく、ましてや医療事故などでは決してない。今回の事件は、割り箸が刺さった時点で、残念ながら致死的であったということなのだと思う。どう頑張っても、ご遺族の望まれるような「事実」は明らかにならないと思うので、この事故をゆっくり受け入れていくしか、哀しみを癒す方法はないと思うのだ。これは、誰のせいでもないことなのではないだろうか。
 誰かのせいということにするから双方とも辛くなるのだと思う。「医者のせいじゃなければ、我々遺族が悪かったというのか」という感情が生まれるであろうことは想像に難くない。ただ、もし「避けがたい不幸」に関して、結果責任で医者を悪者にするのであれば、それと同様の理由で、「割り箸を加えて走り回っている子供をとめなかった」という過失が両親にもありますよ、という話になってしまうということで、それが、ネット上のやや心ない遺族批判というものに繋がっているのだとも思うのだ。毎日新聞の言葉を借りれば、

 事故以降、インターネット上には両親を中傷する書き込みもあったといい、父正雄さん(57)は「隼三に障害があると事実でないことを書かれたり、遺族はクレーマーだという書き込みもあった」と心ない言葉の暴力に怒りをあらわにした。

ということになるようだ。心ない言葉の暴力というけれども、正直なところ、この医師に刑事罰が問われているということもまた、心ない暴力と言わざるを得ないのだ。お子さんに障害があるという内容についてはよく分からないけれど、「遺族はクレーマー」と要約されてしまった部分については、そうして善意の医師に対して振るわれた暴力に対しての抵抗だった部分も大きいと思う。もちろん、僕は以前より再三繰り返しているように、ネット上で医師を名乗るような人々が、口汚く誰かを罵るような態度には共感しかねるし、実際にお子さんを失ってしまったご両親を追いつめるような言動は褒められるものではないと思うのだけれど。
 毎日新聞によると、

医師に無罪を言い渡した20日の東京高裁判決は、捜査当局が医療事故の刑事責任を追及することの難しさを改めて示した

のだそうだ。そりゃ、そもそも刑事責任が存在しないところに、責任なんて追及することができるわけがないだろうさ。
 記事中には書かれていなかったが、別のソースによると、判決後の記者会見で遺族は「到底受け入れがたい判決。上告を希望します」と述べたとのこと。

不当起訴された耳鼻科医を支援する会

http://erjapan.ddo.jp/index.html