無題

 物が捨てられない、と再三この日記でも言っている一方で、僕はあまり写真をとりためたり、ライブをきっちり録音したりということをしていないことに気がついたのです。高校の時にのめり込んだ「演劇」という芸術も、大学で始めた音楽も、あるステージで演じるために、同じ脚本なり楽譜なりをもとに練習して、それでいて、全く同じということは決してなくて、「本番」という場所に表現するのと同時に、その表現は過去のものになっていく。写真とかビデオとか録音とかいう方法で、なんらかの記録は残せるけど、その「場」っていうのは文字通りその場限り。僕の真に捨てられないのはそういう過程なんだと思います。人生のどの一部分も消せない、という感覚。
 目に見えてあるのは今の僕だけど、それまで僕が吐いてきた言葉とか、積み重ねた行動っていうのは、現在のものとしてみることはできない、という考え方。日記で吐いてきた言葉というのも、日常会話も全て含めて、ある場で確実に僕の口をついてでてきた、あるいは文字として表現したものであり、その事実は誰にもかえられないという、本当はただそれだけのことでいいのです。
 サイトの掲示板のログを必死にバックアップしたり、日記の過去ログを余すことなく掲載していたり、一生懸命文章選んだりという行為とか、医療・医学に対して真摯であれという呪縛とか、そういうことから一度逃れたという意味ではてなダイアリーを書いているのだけど、結局その過去ログもこまめに保存しているのです。