旅人たち

 つい先日、大学時代にお世話になっていたバーのマスターが任国に旅行に来るというので、あわせて休みをとり、行きたいと言っていた地方都市へ一緒に行ってきました。さらには、その友人たちが、それぞれ世界各国を旅行中で、任国にタイミングをあわせて集合するというので、マスター以外は初対面(厳密に言うと、お互い認識していない中で会っていた可能性は高いことが判明)ではありましたが、みんなで合流して有名なスポットにお連れしたり、食事をご一緒したりしました。ちなみに、現任地で最も有名な観光名所には、いつか友人が来たら一緒に行こうと思っていた結果、ずっと行く機会が訪れず、実に着任15ヶ月目にして初めて訪れることとなったのでした。
 その後、僕のマレーシア出張のタイミングと、旅人たちのタイミングが合うことが判明し、一部の方々とはペナン島で再開。まだ旅を続ける者あり、長期に渡る旅を終えようとしている者あり…
 彼ら旅人たちの話をいろいろきいていると、僕の旅熱も相当に盛り上がってくる一方、今の仕事を辞めなければ、恐らくしばらく色んな国を数年ごとに異動することになるので、1ヶ所長期滞在型の旅行中と言えなくもないな…と思ってみたりもするのでした。人生も住所も迷走中で、たまにふと我に返っては、果たしてこんなんでいいんだろうか、と今更どうしようもないことをうじうじ考えてみたり。特にいわゆる真っ当とされている人生を、季節感のある人生を歩んでいる同級生とか後輩とかみると、限りある寿命に焦ってみたり、開き直ってみたり。
 僕は元気です。

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

 読了。別に本というのは難解である必要は無いし、伏線やらプロットやら謎やらが想像通りに進んでは行けないというものでは無く、心を打つものがあるのは確かなんですが、いろいろと勿体無いな、とは思いました。
 膵臓というのはたまたまのプロットであって、多分具体的な何かは想定されていないから、膵臓に抱えている何かと、ヒロインの行動との関係性が全く不可解に思えてしまうのはまあ職業病なんでしょうね。ファンタジーとしてはそれでいいのかも知れませんが、せっかくなら具体的な何かを想定して、そこに矛盾しない描き方をしてもよかったのではないか、とは思います。それに関して作中で詳しく語られることは結局無いし、話の筋には関係ないと言われてしまえばそれまでです。
 主人公のそれまでの生き方と、会話の切り返しのイメージがうまく重ならないところがあって、そのたびに読書の世界から引き戻されてしまうことがありました。作中でそれを意識しているということがややあからさまに語られるように、ある作家のような会話の妙っていうのをこの作品の肝の一つとしようとしているというのは分かるのですが、それにしてはテンポはあまり良くなくて、一読してスッとは入って来にくい台詞回しも少なくありませんでした。いや、むしろ主人公のそれまでの生き方故に、これくらいのテンポの悪さがあったほうがリアリティがあるのだ、という考え方ができなくもないのかも知れません。実際、一息で吐くように飛び出した表現にハッとするような箇所もありましたし。
 大きな伏線のように最後まで引っ張りながら、あんまり回収されていないようなアイテムについても、どうにも気になってしまいました。無理に入れ込まなくてもよかったのでは、という気もします。
 なんとなく本筋とは関係のないところがいろいろと気になってしまう作品ではありましたが、心を打つものがあったのは確かですし、これはデビュー作ということなので、機会があれば別の作品も読んでみようかな、と思います。

羊と鋼の森

羊と鋼の森

羊と鋼の森

 海外で暮らすようになってから、読みたい時にすぐ手に入り、かさばらない電子書籍というものにも手を出すようにはなってきましたが、できれば紙の本をめくりたいと思い、一時帰国の際に目についた本をわさわさと買うということをしています。2016年本屋大賞受賞、そうやって目立つ場所におかれている本は、やはり手に取る機会が増えるわけで、毎年大賞作品を必ず読むというわけではないけれども、まあ振り返ると結構読んでいるような気もします。
 一つのことに誠実に取り組んで極めていく、ということが絶望的にできない僕にとって、一つの道にじっくり取り組むことのできる人というのは尊敬に値するし、そうした物語には非常に感銘を覚えます。静かで力強い文章。短いセンテンスが心地よいテンポで綴られて、ラストまで同じような静かな、しかし力強いテンションで綴られる物語は、まさに主人公の心をそのまま映し出してるような、そんな心地よさを感じました。
舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

 一つの物事をつきつめていくというテーマを同じくするという意味で、2012年に本屋大賞を受賞した「舟を編む」とも似た読後感でした。「舟を編む」の方が、より目に見えてわかりやすい目標達成の場面や、人生における大きなイベントの描写などがある一方で、「羊と鋼の森」には、一見そうしたわかりやすいなにか大きな盛り上がりというのは描かれていません。しかしながら、僕にとっては「羊と鋼の森」の文章は、静かではあるけれども、むしろより力強いものであるようにも感じました。

だれもが知ってる小さな国

だれもが知ってる小さな国

だれもが知ってる小さな国

 読了。
 作者を交代して続編を書く(もともとの作者の了承のもと)という試みはどんなもんかな、と思いながらも、かつて夢中で読んだコロボックル物語の続きが読めるとあらば買わずにはいられませんでした。佐藤さとるさんに書いてもらいたかったという思いがある一方で、有川版コロボックル物語も、ちゃんと一連のお話を継承した良いお話だったと思います。
 旧シリーズに出会ったのは、古書店で偶然手にとった一作目、僕が読んでいたのは講談社青い鳥文庫版でした。夢中で読み終え、当時発刊されていた4作目まで購入、その後しばらく間があいて、5作目の「小さな国のつづきの話」、さらに忘れた頃に番外編として「小さな人のむかしの話」を書店で発見したときは、喜び勇んで単行本で買って帰ったのを覚えています。
 何度も読み返しながら、明らかに大団円を迎えてしまったものの、どうにか続刊が出ないかと思い続け、当時はネット書店などもなくて、必ずしも全ての新刊が入荷されているわけではないとは思いながらも、近所の書店に行くたびに、書棚を端から端まで調べて、コロボックルシリーズに限らず、お気に入りの本の続きが出ていないかどうかを調べていたものです。
 こんな形で21世紀にコロボックル物語の続編が読めるなんて夢にも思いませんでした。願わくば有川版の続きも読んでみたいものです。
 読みながら、過去作品を読んでいた頃のいろんな思い出もよみがえり、身悶えたり懐かしかったり。実家は本の山で、どこかにあることは確かながら発掘がやや困難ではあるのですが、また発掘して過去作も読み返してみようかなと思ってます。新イラスト版なんていうのも出てるみたいですが。
 コロボックルの思い出と言えば、本作とあとは「オホーツクに消ゆ」ですかね…(蛇足)。
オホーツクに消ゆ

オホーツクに消ゆ

堀井雄二さんのアドベンチャーゲームの新作も待ち続けているのですが。ドラクエもいいですが、こっちも作ってくれないですかね。立ち消えになった「白夜に消えた目撃者」の企画とかどうにかならないんでしょうか。

ウェブ日記

 何か書きたいと思ってもtwitterあたりにちょっと書けば満足してしまうし、世の中に対する主義主張みたいなのは似たようなテーマに関してすでに一度や二度書いているってことが多くなってきて、「ウェブ日記」を書くことも少なくなりました。blogなんて言葉が無い頃、ただウェブ上に日記を書いているっていうことが自動的に小さなコミュニティの一員になってしまうような時代に、読み手がある程度見える中で日記を書いていた頃の楽しみが失われたような気がするっていうのも書かなくなった理由かも知れませんし、あまり本格的に身元を隠しているわけでも無く、正直なところバレたところでまずいことを書いているわけでも無いんですが、プロフィールに「なんというか、僕がザウエルという別の名前を名乗って、病院とも学校とも関係のないところで勝手なことを言っているという、そういうことが重要だと思っています」なんて書いているように、基本的には実名で活動している場所から切り離されていることが重要だと思っていたこの場所に、職業と居住国を書けば間違いなく特定されてしまうような生活を始めた今となっては、かつてのスタンスで物を書くことができなくなったということも理由なのかも知れません。
 ちなみにウェブサイトを作ったのは1998/7/2、もうすぐ18年を数えます。最初の日記は同じ年の9/25に書いているようです。今も日記という意味では書くことが無いわけでも無いのですが、実名を使っての近況報告という意味では、facebookで事足りていているというのもあって…。
 同時期に日記を書いていたような人々の一部は、いまだウェブ日記、あるいはblogを書き続けているようですが、多くは僕と同様フェードアウトしていて、古いテキストが残っている人もいる一方で、全く持って消え去ってしまったサイトも少なくありません。たまに思い出したように昔よく見ていたサイトを巡ってみたりするのですが、新しい技術だと思っていたインターネットの世界に、郷愁を感じるようになってしまったんですね。
 たまたまはせぴぃ先生が「恒例のご長寿日記読み日記」なんて書いているのを見かけて、日記猿人日記才人の時代を思い出しただけです。
http://diary.hasep.net/16/05/15.htm
 まあいろいろあって何年か前に大学医局は辞め、会社経営者を経て、海外で働くことになり、中東某国→中東の別の某国で退避生活→アジア某国と辿ってきて、現在引き続き暑い国で働いております。ザウエルという別の名前を名乗って、職場と関係のないところで勝手なことを言っている、というスタンスが守られる範囲で、また日記でも書いてみようかなと思ったり思わなかったり。

本家サイト移転

 長らくniftyに放置していたはてな以前のサイトですが、@homepageサービス終了ということで、旧urlはいずれアクセスできなくなるようです。
旧: http://homepage1.nifty.com/zaw/z/
新: http://zaw.la.coocan.jp/z/
 リンク切れしそうなところは気付いたらなおして行こうとは思います。階層など基本的にそのまま移動してます。