「酒かメスか」-0474-

 正月帰省せず、病院からのコールに怯えながら、即興バンド「半宇宙」の面々と杯を交わした際、一番幸せなことは何か、という話題になって、自分に振られたら、「酒」とか答えようと思っていたのだけれど、いざ自分の番になったとき、ついつい「手術で人を切ってる時」なんて答えてしまったのでした。

 術野なんて全く見えない場所で手術に参加して、モニター越しに何時間もお腹の中をみつめているのは、それなりに大変です。上司が、「面白い映画観てたって、3時間も観れば疲れるんだから、8時間もちまちますすむ手術の映像なんてみてれば、そりゃ疲れるよ」と言ってたのに納得。ただ、もちろん術者はそんなこと言ってられないわけで、僕もメスを持っている間は時間を忘れるわけで、エンドルフィンとかアドレナリンとか出まくっているに違いないとか思うのでした。今日のラパ胆(腹腔鏡下胆嚢摘出術)は相変わらず渋い出来で、いまだひとりで手術が出来る気がしない二年目の冬なのです。