「電灯が灯る日」-0127-

 街に初めて電灯が灯ったあの日の事を覚えていますか。電気系統の異常で、医学部研究棟、図書館、体育館、病院至る所の必要のない電気という電気はシャットダウンされ、緊急でないオペは中止、場合によっては患者を移動、駐車場のゲートは開け放たれ、自動ドアを開けっ放しにした真っ暗な図書館。異常な一日。なんとか夕方には復旧し、弓道場で、念願の蛍光灯を灯しました。

 普段はコンピュータでスキャニングしている病理部の切り出し作業も、コピー機を使う一世代前の方法すら取れず、手書きで切り出し部分を記録しました。スキャニングの場面も見ずして、いきなり何十年か前の光景を見るのです。基礎等の部屋のドアも窓のブラインドも開けて光を採り、教授は明るい窓辺で何やら書き物をしています。僕らは、こんなにさわやかに晴れた日を、いつもわざわざ暗く光を遮って置いて、改めて蛍光灯で照らしたりしていたんですね。

 どうしても落とせない電源以外は徹底的に落とされ、暗い廊下で怪しい冷蔵庫がぶ〜んと音をたてています。生協の食堂も今日は営業を停止して、外でお弁当を売っています。売店は電気を落とした中で営業しているようで、店の置くのレジには人影が見えます。小さい頃通った駄菓子屋を思い出します。

 かと思えば、まぶしすぎるコンビニ。でも結局僕らにはコンビニが必要でした。電気を求めました。電気が戻った体育館ではバド部が練習していて、僕は一番はじっこの部屋でエレキベースを弾くのでした。