地元へ

伯父が大腸癌の末期で、抗癌剤なども使っていたものの、回復の見込みはない状態でした。僕は小学4年生くらいまで、伯父の家から学校へ通っていたので、かなり親しい親族なのです。
前回入院したときにはまだそれなりに元気で、その後一時退院していたのですが、昨日、羽田へついたとたんに再入院の知らせをうけたので、今日は地元の大学病院へ見舞いへいきました。
黄疸強く、痛みもかなりでてきたために、モルヒネが開始されていました。モルヒネで痛みはだいぶとれたようですが、その分、傾眠傾向。僕が職場で何度と無くみてきた光景。
本人は、前回の入院の時点で、自分の病状を正確に理解していたと思います。伯母は、本人への病状の正確な告知を拒み続け、いとこたちもそれに従っている状態。癌だということは知らされたものの、転移の状態とか、予後などについてはきちんと説明を受けていないということでした。
伯父は、そうやって「隠されている」ことを十分知っていたと思うし、主治医も気を使って、直接的表現は避けながらも、かなり正確な情報を、本人に与えてくれていたようです。家族には話せないことを、僕に対していろいろ話してきたのです。
僕も何度となく、伯母やいとこたちに、若くしっかりしていて、正確な告知を望んでいる伯父に対し、ちゃんと話をしたほうがいいだろう、とは話したのですが、一緒に生活している人々を差し置いてまで、僕にそういう決定権があるわけではありません。また、今回は僕は主治医でもなんでもなくて、ただの患者の親族。病気は本人のものだし、こういう光景をみると、やはり告知はまず最初に本人にしたいと思います。なぜか日本では、まず家族へ告知についての相談をしなくてはいけないという風潮が色濃いのです。
「あと数日と言われたんだけど」と、伯母や、見舞いに来ていた伯父の友人たちが僕に尋ねるのです。僕がこういう患者さんを受け持っていたとしたら「なるべく早く、親しい方々に面会してもらってください」という状態で、もう、いつ心停止するかわからない、意識のあるぎりぎりの状態でした。