患者は、わかってくれない

いやしのつえ「Doctor's Ink」(135)
http://www5f.biglobe.ne.jp/~iyatsue/wakattekurenai.htm

「患者さんに信頼され、愛される医者に」

 それに対して、先生は、苦笑しながら、僕たちにこんなふうに言いました。

「俺は、医者に評価されるような医者になりたいな。まあ、お前たちにもそのうち、わかるかもしれないし、わからないかもしれないけどね」

なんとなくわかります。無論患者さんに頼られることも必要なんですけれど、医学知識や技術に裏打ちされたものを持っていないと何の意味もないですから。医者に頼られる医者、っていうのになりたいと思います。

 「医学的に正しいこと」をプロとして貫く代わりに、患者さんがそれについていけずにドロップアウトしてしまうリスクが高くなることを受け入れるべきなのか、それとも、「優しく(甘く)接して、せめて病院で状況確認だけでもしておいて、最悪の状況からは少しでも遠ざけるようにする」という妥協をするべきなのか、それはいつも、ものすごく悩ましいことなのです。

外来の短時間での生活指導ってのは本当に悩ましいんですよね。きちんとやろうと思えば、かなり厳しいことを言わなくてはいけませんし。ただ指導したという事実を残すことだけにに甘んじるならば、形だけ「気を付けてください」と言っておいて、本当に患者さんが生活を改めたかどうかは気にしないで、薬をいくつか処方するにとどめるのです。後者のほうが圧倒的に患者さん受けはいいんですよね。