伝授

http://d.hatena.ne.jp/anesthesia2003/20050812/1123814466

素直に伝授する事と、こじ開けて突っ込むのとは少し違うような気もしますが、医者の修行が徒弟制度ではないので、私は、進んで取り組んでる人には道にエサを少しばらまくようにしてました。

昨日の僕の記述は舌足らずでした。
こちらからくらいついていこうとしても、知識や技術をなかなか伝授しないことを良しとするような人がまだまだ多いということです。もちろん、知識を受け取ろうとする側の態度とか、そういう要素はたくさんあると思いますが。とりあえず、今現在で治療に難渋している患者さんがいるとして、若い医者が自分の知識の範囲内でできないことを、上級医に頼ったとき、それでもなお具体的な道を示さない、って人がいるんですよ。それで人が死んだらしゃれにならないな、と思うわけで。
http://d.hatena.ne.jp/zaw/20050113#p1

僕もかつて、ある患者さんの状態について上級医に責められて、「○○使ってみるとか、××にするとか、いろいろあるだろう」とかなんとか言われて、でも、自分の指示はそれとはちょっと違ったアプローチから患者さんの状態を保っていたので、さすがに困って、「僕はこういう理由でこういう指示で様子をみています。先生が正しいと思う方法を、抽象的ではなくて具体的に指示を出してください」と言ったことがありました。ちなみに、その先生は、結局具体的な指示を出さなかったのです。僕はその先生のことは、今でもあまり尊敬できません。

もちろん、なんでもかんでも人にきいて、自分で調べないのは良くないのかも知れません。でも、こと医療という場において、失敗して経験を重ねるというのは、患者さんに犠牲を強いることになるのだし、すみやかに正解を教える、というのが妥当な場面のほうが圧倒的に多いと思うのです。もっとも、医療に唯一の普遍的な「正解」というのはほとんど存在せず、良い方に転ぶかどうかは結果論である部分も多いので、余計「考えてみなさい」と言われても、「あの先生はこういう考え方だから」という心理戦みたいのになってきます。

実際、医学部の試験なんて、「国試的な正解」「うちの大学の第一内科的な正解」「外科的にはこうだけど、放射線の試験では不正解」のような、出題者の主観がバリバリに入ったものが多いんです。うちの大学だけかと思ってましたが、ネット上のテキストを見る限り、各大学でそれぞれ苦労があるようですね。

だから、僕ももちろん僕の考え方が絶対的な「正解」だとは思わないけれど、研修医の指示や処置へ口を出すときは、「僕はこう思うんだけど」とはっきり僕的な「正解」を言うようにしているし、研修医と言えども、きちんと理由を言った上で自説を述べてくれば、それをきく準備はあります。

ちなみに、一番嫌いなのは、「慣例的にこうなってますから」って奴。知るか、そんなの。

まあ、その一方で、上司が積極的に伝授する、前述の言葉を借りれば「こじ開けて突っ込む」ということに反応を示さない若手医師、というのもいるわけで。
http://d.hatena.ne.jp/zaw/20040617#p1

今回の研修医(2年目なので、義務ローテーションではない)の場合、はたしてどこまで何ができるのか僕らにとっては未知数だ。だから、患者さんの受け持ち、指示出し、処置などについては、常勤医が全責任を負っている。この病院では、CTの造影の注射とか、その他いろいろ主治医が呼ばれてやらなければいけないことが多いのだけど、そういうことも一律研修医に押しつけるようなことはしないで、原則、その検査をオーダーした医師がこなしている。外科部長も含め、自分の仕事としてきちんとやってくださる。病院がとる研修医が、外科をまわってこないことが多かったため、もともと研修医がいないことが多い。一番下っ端は4年目くらいの医者で、現時点では僕。みなそれぞれ独自にするべき仕事をこなしていかないとまわらない。

で、とりあえずは、僕と僕の指導医にがっちりつくような感じで研修をはじめてもらい、手術や検査などあれば積極的に関わってもらうようにした。徐々に患者さんをしっかり受け持ってもらい、指示なども出してもらおう、ということだったのだけど、日中どこかに消えてしまうことが多い。僕はほとんどを病棟か検査室か手術室で過ごしていて、特に用事のないときは病棟に足を向けるようにしている。その合間合間で、必要な処置とかやっていくわけで、基本的に行動をともにしてくれていれば、いろんな病棟業務にも関われるはずなのだけど。そういう状況だと、患者さん待たせて、研修医を呼び出すような気にはなれないし。

2ヶ月だからどうこういうよりも、僕は正直そういった態度に憤っている。