僕、無職

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明日は3月31日。
大学病院の医師がざっくり解雇される日です。

大学病院に勤めるほとんどの医師は医員という身分の日々雇用職員であり
常勤の医師は、助手、講師、助教授、教授といったほんの一握りであることは意外と知られておりません。
(助手、講師、助教授、教授にしたって、そのほとんどは医学部(文科省管轄)から給料をもらっているのであって、大学病院(厚生労働省管轄)からもらっているわけではありませんけれど。)
実際に手術をし外来で患者を診、病棟で指示を出している医師の多くは日々雇用職員です。
場合によっては大学院生という無給のボランティアであることもありますけど。

大学病院ではこれら日々雇用職員を年に一度全員強制解雇することによって、勤続一年以上になることを防いでいます。
(勤続一年以上を出さないことによるメリット・・・よく知らないのだけど、年次有給休暇を与えなくてすむ、とかかしら?でもそんなものあったってとる筈ないじゃない!正職員の助手や講師だってとっていないのだから。)
大学病院を支える主力の医師らは3月30日をもって解雇され、4月1日に新規採用されますので、3月31日はみんな無職。

 そういえばそんな日でしたね。しかも、3/31に、公務員や公務員に準ずる職には絶対につきませんというような承諾書にサインまでさせられた気がします。
 まあ、おかしな制度だな、とは思っているのですが。現に今だって、書類上は、「自ら進んで勉強のために大学病院のお仕事をお手伝いさせてください」ってことになっていて、麻薬免許の申請まで、身銭を切らされて行い、外来に出たりとか検査に携わったりしているんですよ。

一日の空白の違法性を言うならば、そもそも勤務形態そのものが違法なのだし、それを言い始めたら、雇い主たる病院ではなく医療制度そのものの矛盾にまで言及しなけりゃなりません。
文句を言うなら行政に言ってくれというのが病院事務の返事だろうし、さらにびっくり、人のいい我々の頭の中では、行政→国民→患者さん→目の前の患者さんというすり替えがなぜか起こって、空白の時間は雇い主に搾取されたのではなく目の前の患者さんに捧げられたことになってしまうのです。

 ちなみに、この空白の一日の無職のために、国民年金の保険料を一月分払うことになるのですが、気付かず未納になっている人も多いのではないでしょうか。
 以下、再録。 

2004/4/29(木)「年金」

 ここしばらくは、一年目の研修生活を彷彿とさせるように、ほとんど病院にはりついていたので、社会の動きとかそういうことが本格的にわからなくなっていました。人と接する仕事なのだから、本当はそういうのは良くないんでしょうね。のめり込んだり、大騒ぎしたりするかどうかは別として、知ってるってことは大切だと思っています。

 いつものように、ネットから話題のニュースを知る僕。最近は、年金問題が取りざたされているようです。閣僚の未払い問題とか。だいたい年金はわかりにくすぎるんですよ。義務にするなら税金と一緒にとればいい。

 僕は医者として4年目だけれど、病院間の異動は転勤というのとはちょっと違って、その都度退職と新採用を繰り返すという、面倒なことをしているのです。異動に際して、無職の期間があると、例え一日でも、国民年金加入の必要がでたりするのですが、これが自動的に手続きされるかというとそうではなくて、どうか国民年金を払わせてくださいと、役所まで出向かないと払えない仕組みです。

 ただでさえ、引っ越しのために休みがもらえるような環境でもないのに、平日の昼間に役所に行くってのはとても面倒な行為で、そんな払いにくいもの、未納者が多くて当たり前です。多分いまでもそうなんですけど、うちの大学のヒラの医者は、日雇い契約で採用されていて、それでいて三月三十日にクビになります。三月三十一日は無職で、仮に大学に残る人間は、四月一日付でまた採用されます。この一日の無職期間のために、手続きして三月分の国民年金を納める必要が出てくるという、とても面倒なことになってます。また、僕は今年一月から三月まで、公立病院の麻酔科にいながら、書類上は職員ではなく研修生という扱いで、常勤医師の身分をもらえなかったので、保険証は出ないわ、住民税は自分で払いにいかなくちゃならないわ、国民年金の加入手続きがまた必要だったりとか、自分でも異動の度にどんな事務手続きが必要なのか、よくわかってない状態です。

 ちなみに学生時代は、申請して年金の免除を受けていました。この間、加入扱いではありますが、免除を受けていた期間に相当する分、将来受けられる年金が減るとかなんとか。追納もできて、完納すれば、減額されずにすむとかなんとか。今のところ、多分無職期間に相当する部分の年金はちゃんと払っているはずです。追納はしていないのですけど。どこまでが義務でどこからが権利かもよくわからないです。払おうとする人間も戸惑うシステムなのだから、あまり払おうという積極性の無い人間は、当然払わないまま終わるのではないかと思うのです。

 無論、職場がずっと変わらない人は、年金の種類もずっと変わらないわけで、どこかで一度手続きしてしまえば、なんとなく年金を払うことになって、未納はおこりにくくなるんでしょうけれど、ころころ職場や所属がかわって、年金の種類もころころかわるような立場の人は混乱しないわけがありません。

 まあでも、そういう制度の責任者である方々が、「わかりにくい」とか「勘違い」とか言っているのは救いがありませんけど。

 僕、職場移るたびに手続きや連絡しないといけないころをリストアップしてあるんです。四月も終わろうとしている今なお、まだ手続きすんでいないものも多いんですけど。

 不動産。電気。ガス。水道。固定電話。携帯電話。PHS。クレジットカード。インターネットプロバイダ。郵便局、貯金通帳と郵便物の転送。銀行。マイレージ。運転免許。生命保険。所得保険。自動車保険。年金。住民票。退職届。履歴書。保険医登録。麻薬免許。

 だいたい四月に異動するのに、異動先決まるのが二月とかひどいと三月とかだったりします。そして親への連絡が一番遅かったりもするのです。

医者の雇用条件

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20041109#p5

大学院生が外来や病棟を手伝ったり、大学の外の一般病院に勤務している医師が、大学で外来をやっている場合など、大学からバイト契約をしているというのはほとんどききません。なんだかわからない医者が、適当に好きな病院で契約無しに働けるわけでもないので、逆に、大学で臨床をするにあたり、研修登録医のような手続きをし、逆にお金を払って働くという摩訶不思議な状態もまかり通っているのです。おそらく、医療職以外の方は、この時点で理解不能なのではないでしょうか。研修医に払う金が無いということだけクローズアップされていましたが、別に給料もらってないのは研修医に限った話ではなかったのです。

医者の名義貸し

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20061206#p1

 国立大学病院の、僕らのような日雇いの非常勤の人間は、何年かにわたって大学に勤務する場合でも、三月三十日に強制退職させられるという悪しき制度があります。三月三十一日は無職で、四月一日に新たに採用。これは、どうあがいても勤続一年以上にならないようにするためのもので、これにより、僕らはボーナスを貰えません。また、その一日間の「無職」のために、先に述べたように、国民年金に加入し、直後に脱退するわけです。実際、三十一日に下っ端がみんないなくなったら困るので、みんな勤務しているのですが、その違法性とか、空白の一日の健康保険がどういう扱いなのかとか、よくわからないことは多いのですが、みんな勤務の忙しさから、だんだんそういうことはどうでもよくなってきます。

追記

 国立大学の場合、独立行政法人化などを機会に「空白の一日」は解消されたケースが多いようです。どっちにしろ、まともな賃金は支払われていませんけれども。