10:40p.m.「アーティスティック」-0022-

 音楽が好きだ。演劇が好きだ。彫刻や絵画といった「美術」ではなくて、形のない芸術が好きだ。録音録画媒体は、それを最初から意識していない限り、参考にしか過ぎない。あくまで、その場限りのものである芸術に心惹かれる。

 楽譜や脚本といった形でガイドラインがあっても、それはあくまでガイドライン。人が変われば違うものになるし、時が違えば、やっぱり違うものになる。その場限りのもの。生きているもの。そして、あるレベルで表現するためには練習が必要である。怠ければすぐ衰える。気に入らない部分でも、舞台上で出してしまえば、もうやり直しはきかないナイーブなもの。一人でどうにかするだけでなく、周囲との調和も大きな問題となる。一緒に演じるものたちと、演出するものたちと、会場と、お客様と、その全てをひっくるめて、音楽とか演劇といったものが完成していく。

 今日もシェリル・クロウ練。私がまともに楽器を持ったのは、大学に入ってからで、最初はジャズベースを学んだ。軽音活動はごく最近のことである。ジャズ、軽音、弓道という3つの部活に参加し、さらには外のライブや、パーティーバンドのバイトをこなす。秋は試合にライブに学園祭に、一日に複数の予定が入る多忙な季節だ。練習が鬱陶しいと感じてみたりしながらも、やっぱりこんなことが好きだ。

 学校のみんなは、どうやら明日の泌尿器科のミニテストのために勉強している模様。所詮出席がわりなので、こんなことのために勉強するのは気がすすまない。この学部の特性として、勉強は自分の責任でやれるところまでやらなくてはならない。医者にとって無知は罪だ。患者さんの担当の医師が、まるで博打のように当たり外れがあったんじゃたまらない。屋根の修理ならやり直しや賠償金を請求すればすむことだが、体は一つだ。だから私も、決して勉強しないわけではない。ただ、今回のテスト用にはいまだ何一つ勉強していない。1コマ分の資料を担当していたので、バイアグラについては完璧なのだが。