「寄生虫学講座」-0097-

 藤田紘一郎の「笑うカイチュウ」が文庫になっていた(講談社文庫より刊行)。他の数冊の本と一緒に買って帰った。ふと気付くと、平田オリザが解説を書いていた。私は、平田オリザの戯曲を活字として目にしたことはあるが、実際の芝居はまだみたことがない。「寄生虫のような奴」という舞台をやったことがあったらしい。「笑うカイチュウ」にしても、「寄生虫のような奴」にしても、決してマイナスのイメージだけではない。「寄生虫のような奴」なんて、最低の人格を表す言葉として使われているが、当然、平田作品は、そんなイメージも逆に利用して、藤田先生の言うような寄生虫のプラスの効果に繋がっていくようだ。

 ところで、寄生虫学自体、学ばない医学部が多い中、私の通う大学には、しっかりと寄生虫学講座が存在し、実習もしっかりやり、テストも厳しい。寄生虫という言葉を用いず、医動物学なんていうところもあるらしい。東北大の友人は、寄生虫のテストは、微生物学のテストの中の小問一問程度、5点分くらいとか言っていた。東大、京大にも講座は無い。日本においては、寄生虫病があまり問題にならなくなったことの現れであり、確かに、私の寄生虫のイメージも、親父の虫下しの思い出と、実習でみたセロファンにびっしりくっついたカイチュウの卵、犬の血管に大量に詰まっていたフィラリア、あとは、タラを煮て食べるとき、ヒモみたいに見えるのが寄生虫だと知ったことぐらい。

 サバの生食でアニサキス感染が起こり、激しい腹痛に見舞われることがある。そんなわけで、病院実習では、つい、「昨日サバ食べましたか?」とかききたくなる。ある同級生の女の子は、問診していくと、どうしても診断を寄生虫病にしたくなるとか言ってました。確かに、うちの大学の寄生虫の講義にはインパクトがある。実は、「笑うカイチュウ」の中に、ひょこっとうちの大学の教授が触れられていたような気がしないでもない。

 皮肉なことに、近年の自然食ブームによる有機農法は、農薬を減らした分、下肥の利用で、再び寄生虫感染者を増加させ、寄生虫自体もかえりみられるようになった。ただ、かつてカイチュウなんてあたりまえで、寄生というより共生のようなものだったともこの本は言う。また、実は寄生虫感染が、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーを減らしていることもわかっている。そうそう、目黒の「目黒寄生虫館」の存在は知っていたが、一度訪れてみるのもいいかも知れない。かつてフジテレビで放送された、ウゴウゴルーガには「サナダ先生」なんてのもいましたね、そう言えば。

 今日、奨学金の関係で、成績証明書の申請に行ったら、教務で某教授にであい、4年の判定会議は昨日終わったと告げられた。明日、教授会があり、その後結果が掲示される模様。…だそうですよ、こっそり読んでるうちの大学関係者のみなさん。