「大学病院の使命とはいっても」-0285-

 今日で第一内科のポリクリ(病棟実習)も終了。いよいよカウントダウン、あと2週で全科終了。夕方は、来年度のカリキュラムについての説明会がありました。うちの大学、対外的には、「柔軟なカリキュラム」とか吹聴しているらしいのですが、早い話、行き当たりばったりの混乱期で、国家試験の成績とか、国策とかに踊り踊らされ、卒後研修の新制度の問題なども絡んで、無関心ではいられないわけです。

 1内のポリクリ期間は、いろいろ濃かったです。担当患者さんが、確定診断には遠い状態で、レポートにも考えられる限りの鑑別が並びます。ぞくぞくと検査に試料を提出したりするなか、気付けば主治医がインフルエンザでダウンしていたりするのです。ふとみまわすと、実は、研修医の数が少なかったりしており、外来に出てみれば、良く知った顔の後輩が受診してインフルエンザの治験のお誘いを受けていたりしている外の椅子に、実はいままさに治験を開始しようとしている研修医が座っていたりして、なんとなくマスクが手放せない2週間でした。また、その間、今更ながら行われた、学生対象のツベルクリン反応検査で、一度陰性を言い渡され、一週おいて再判定の結果どうやら陽性で、自費でのBCGは免れたのでした。

 かぜと言えば、某教授がかぜをひいて、自分の科の大部屋に入院して、注射が下手だと看護婦を説教しはじめたりしていたそうです。あんまり不自然なので、同室の患者が「あれはどんな人なんですか?」と主治医に尋ねたという話には大ウケしてしまいました。事の真偽はさだかでなかったのですが、先日、ラーメン屋でばったりとその科の先生方に遭遇した際にウラをとりました。その後、教授回診とか言って、その患者さんを診察するんでしょうね。

 なんにしても、医療関係者が患者というシチュエーションは、顔見知りでなかったとしても、妙にやりづらい部分があって、その病院関係者のオペには、極力実習生や関係のないドクターが立ち入らなかったり、看護婦や医師の患者に対しては、専門用語でムンテラ(病状説明)を行うなど、必要な区別は行っているようです。

 他にも、ある同級生が、かつて大学病院を受診した際、その疾患のスライド用の撮影をされそうになって逃げたという話もあります。医師からみれば、大学病院の教育・研究の使命を知っている学生が相手だという気安さがあったのでしょうが、学生側もいたずらに逃げるわけではなく、自分の良く知っている学生たちに、自分が教材として供覧されてしまうのは耐え難い部分もあります。これらは、一般の患者さんは、少なからず教育に協力させられるのに、現に医学を学ぼうとして、いろいろな患者さんに協力を仰いでいる身である学生が、その立場を拒否するという悪い面が目立ちそうですが、実生活を共にする集団の中に身を捧げる、ということを想像して下さい。会社や学校の同僚に体をじろじろ見られたり、カルテを回覧されたりする状態なわけで、少なくとも、自分の大学はあんまり受診したくないと思うのです。