「眼医者さん」-0289-

 気がつくと、ポリクリ(病棟実習)もあと一日なのでした。

 眼科での一週間。午前中、外来で医師にマンツーマンで付き、新患がくればアナムネーゼ(病歴)をとったり、眼圧計ったり、視力計ったり、眼底覗いたりして、テーマをもらって午後発表という流れ。大きな声では言えませんが、生涯において眼科を勉強する機会ももうないだろうと思って、今更ながら、「標準眼科学」なんて購入してみたのです。ノートがわりに教科書に書き込んで、書きながらなんとなくはその疾患をつかんで、あとでメモを見返したりはしないんです、きっと。言ってみれば漢字練習のようなもので、書く行為で覚える部分もあるでしょう。血膜炎だとか、緑内症だとかいう誤字は、ワープロバカ症候群たる所以で、笑い事じゃなくて、手書きだとわりと気付かないもんです。

 眼医者とかいう言葉が独立して存在しているくらいだから、眼科はマイナー(一般内科、一般外科以外をこう呼ぶ)の中でもやっぱり特殊な科だと思うし、おそらく私は、職場としては選択しないと思います。ポリクリも1年かけて全科をまわるわけでして。会社が異なれば仕事は違うかも知れません。しかし、あるひとつの会社でも部署で業務が全く異なるように、医者の仕事も各科でまるで異なるのです。

 明日教授の背後に忍び寄って、微妙な角度からレンズをのぞき込んだりすれば、僕らのポリクリ生活も終了です。4月からは、みんな思い思いの実習にのぞむので、きっとバラバラです。5年も共に過ごせば結構な腐れ縁。例の如く、怪しいやかん酒のあの店で打ち上げなのですね。