「お医者のタマゴクラブの後に」-0513-

 本になった「お医者のタマゴクラブ」のあとがきに、「もし何かに興味を持っていただいたならば、それぞれの分野の成書を手にとってみて下さい。あるいは、その道を目指してみて下さい。誰かのそんなきっかけになることができるならば、無上の喜びです」という言葉を綴りました。

 もともと、人に何かの本を薦められるということが、それほど好きではなかったのです。何か押しつけのような気がしてしまって、例えどんなに素晴らしい作品でも、教科書に載っていて、繰り返し読まされると面白さが消え失せてしまうと思っていたのです。そんなこともあって、僕はあまり人に本とか映画とか音楽とか、いろんな価値観でとらえられるべきものを、薦めるということはあまりしませんでした。

 最近は、人に薦めたり、薦められたりということを、以前のように否定的にとらえることもなくなってきました。少なくとも、押しつけという行為ではなく、誰かの好きな本とか音楽とかを知るということは、割と楽しいことで、そういう入り口から、自分の知らない分野に触れてみたり、その人の好きなものから、人となりを感じたりするのも素敵です。もちろん、「あんな本好きなんておかしい」とか「あんな音楽が格好いいなんていうのは信じられない」とか、自分の価値観を最優先して他者を貶めるような行為が無いというのは大前提です。多感な思春期の僕は、自分の好きなものに対して、そういった拒絶を受けるのを恐れていたのかも知れないし、あるいは、「みんなの共通の価値観」というものにこだわり過ぎて、自分の好きな何か、を表現するのに怯えていたのかも知れません。

 話を戻しますが、「お医者のタマゴクラブ」のそれぞれの記述には、もちろん僕が多かれ少なかれ参考にしたテキストとか、人物とかそういうものがあるのです。あくまで「入り口」としての読み物を目指し、極力「押しつけ」を廃した結果、本文とは別にもうける注釈とか、参考図書という項をつくらなかったのです。

 ネットを飛び出して、本という媒体になったそれは、新たな読者層をつくってくれました。嬉しいことに、その本を何らかの入り口として利用してくれている方もいらっしゃるようです。僕がこの本を記述するのに参考にした全て、と言われると、それは僕が今まで生きてきて体験したこと全て、ということになってしまうのですが、とりあえず、強い関連のある書籍とか、僕自身が、次に読んでみようと思っている文書など、あくまで、ザウエル個人の興味としてのリファレンスを紹介してみるのも面白いと思ったのでした。

 あとは、せっかくお世話になった方を、本の中で紹介できなかったのも心残りでした。特に僕個人だけでは不正確な記述に終わってしまうところを、親切に対応して頂いた方々が多くいらっしゃいます。特に「同性愛」関連の記述に関して、「すこたん企画」スタッフの方々に大変お世話になりました。突然のメールにも関わらず、丁寧なお返事を頂きました。昨日、「お医者のタマゴクラブ」の次に読みたい本として、すこたん企画の本を紹介したいというメールを送らせて頂いたところ、快諾の返答をすぐに頂き、さらには、このサイトへのリンクもしていただきました。お礼の意味も込めて、この日記を書いています。

 実際は、「お医者のタマゴクラブ」の執筆後に読むことになったものですが、「ボクの彼氏はどこにいる?」や、「同性愛がわかる本」といった一連の本から、現在同性愛者がおかれている状況とか、同性愛というもの自体について、多くを学ぶことができました。

ボクの彼氏はどこにいる?

ボクの彼氏はどこにいる?

同性愛がわかる本

同性愛がわかる本

 医療関係者、教育関係者といった立場にある人々は、同性愛者の相談の窓口となることがありえます。その際に、正しい理解がないことで、「精神科的治療」をすすめられたり、「異常者」扱いされたりすることは、特に思春期の子供たちに深刻なダメージを与えます。本来救いの場であるはずの「宗教」にも、もちろん救いの手をさしのべて欲しいところですが、困ったことに、同性愛を悪としている宗教解釈がまだまだ多いのも事実です。

 さて、ウェブ上には、多くの個人サイトがありますが、別にみんな、自分の好きな異性について語っているわけではありません。それは趣味のことだったり、仕事のことだったり、個人の好きなサイトを形成しています。同性愛者のサイトというものも数多くあって、中には、自分のおかれた状況についてとか、その性的指向の部分をクローズアップしたサイトもあるわけですが、全ての同性愛者がそういうサイトをつくらなくてはいけないわけではありません。自分の恋愛対象について語りたい人は語れば良いし、語らなくてもそれはそれで良いのです。

 このサイトと交流のあるサイトの中にも、同性愛者が運営しているものが複数あります。それは異性愛者が運営するのと同様、扱う内容は様々です。ただ、恋愛対象が、多数派ではないというだけです。このサイトを通して、あるいは、このサイトから直接的な繋がりはないものの、ネット上の様々な繋がりを通して、実際オフラインでの交流がある人もいるのですが、それは年齢も性別も、性的指向も様々です。

 インターネット時代に、多くのセクシャルマイノリティを救ったのが、そういった、同性愛者の運営する個人サイトだった、という話をよくききます。実に様々な職種、年齢、趣味の人間がいます。それはごく当然のことですが、同性愛者の世界が、かなり歪められてとらえられていたことから、その当たり前のことに、当事者も含めて気付かなかったのです。僕のサイトからリンクするサイトの基準っていうのは曖昧で、なんとなく興味深いサイトとか、自分のサイトに関連の深いサイトとかへリンクしているのですが、それがまんべんないものかというと違います。毎日見に行くようなサイトにも、リンクしてはいなかったりするので、まあ、個人サイトですから適当にやってるわけです。

 いままで、迷惑がかかるといけないので、「同性愛」を全面に押し出しているようなサイトへ、直接リンクすることはあまりありませんでした。ただ、僕のサイトを入り口にして、その先にすすめないでいる人のために、僕が知っている人々のサイトへは、少しずつリンクしていってみようかと思っています。

 さて、参考図書の続きです。ネット上での交流の課程で、ある本を薦められたのですが、とても面白い本で、一気に読んだものがあります。直接的な「同性愛」の参考書籍では無いし、その表現手法には賛否両論あるでしょうが、僕にとっては大切な本です。ウィーツィという女性とダークというゲイの男性を中心に構成される不思議な家族たちの物語です。
ウィーツィ・バットブックス〈1〉・〈2〉・〈3〉・〈4〉・〈5〉

ウィーツィ・バット―ウィーツィ・バットブックス〈1〉 (創元コンテンポラリ)

ウィーツィ・バット―ウィーツィ・バットブックス〈1〉 (創元コンテンポラリ)

ウィッチ・ベイビ―ウィーツィ・バットブックス〈2〉 (創元コンテンポラリ)

ウィッチ・ベイビ―ウィーツィ・バットブックス〈2〉 (創元コンテンポラリ)

ベイビー・ビバップ ― ウィーツィ・バットブックス〈5〉創元コンテンポラリ

ベイビー・ビバップ ― ウィーツィ・バットブックス〈5〉創元コンテンポラリ


 他のEpisodeに関する参考書籍なども、追々取り上げたいと思っています。