「プロフェッショナル」-0531-

 要領の良い仕事をする人を否定するという気持ちがわからないのです。それは決して苦労していないということではないし、手を抜いているというわけでもありません。逆に「だって一生懸命やっているじゃないか」ということだけを、最低限こなさなければならないことをこなせない、あるいはこなさないことの言い訳にすることのほうが否定されるべきなのです。

 要領よくなにかをこなそうとする人は、いろんな工夫をして、苦労をして、要領よくこなす術を身につけたのであって、それをなんでもかんでも天からあたえられたもののように扱うのは間違っています。もちろん、人はみな違うし、能力の差はあります。誰かがこなせる仕事と、全く同様のことを別の誰かがこなせるわけではありません。

 しかし、プロなのです。その道のプロとして動くからには、それ相応の最低限のラインというものがあるのです。それをこなせない人は、その職業に就くべきではないという、ただそれだけの話。僕が後輩の研修医たちに求めているのは、高度な医療技術でも、完璧な治療計画でもないのです。ただ患者さんのところへ足を運んで欲しいし、その日撮ったレントゲンはみて欲しいし、その日の記録を、カルテに記述して欲しいということなのです。

 新入患者のカルテを白紙にしたまま帰宅。手術摘出標本の放置。冷静になって考えてみても、それらの行為に正当性が見出されません。別に上司よりも先に帰宅するとか、それはそれで構わないけれど、それは仕事がこなせていれば、という話。僕は、一年目の研修医であろうがなんだろうが、しっかりとした休暇はあって良いと思います。良い、というか、あるべきだ、と思うのです。ただしかし、最低限の仕事というものはあるのだし、仕事は仕事として、真面目にやって欲しいのです。権利は義務を負う。