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 一昔前は、他人様のサイトに言及するってのはする方もされる方も体力を使うものでした。トラックバックや記事ごとのコメントという仕様もなく、また、2ちゃんねるのような巨大掲示板も存在していなかった時代、そもそも、誰かへの言及に気付くためには、それなりの準備も必要としました。
 アンテナや無料日記サイトもない時代、自分で作ったサイトを日記才人(当時の日記猿人)とかReadMe!なんかに登録して、アクセスアップを求めた時代。個人サイトやインターネット人口も今ほど多くなくて、そういった日記リンクサイトは、全体をすみずみまでは見渡せないものの、なんとなく繋がった共同体的なものがあったように思います。
 そんな時代、みんながニュースサイトの引用して感想をつけ、同じ話題同士がトラックバックで無尽蔵に繋がっていく、ということはほとんどなくて、みんなそれぞれ一次創作か日常日記を書くのが主流でした。ごくたまに他人様の日記に言及するようなことも見受けられましたが、その時には、礼を失さぬようにと気をつかっていたものでした。一部の人たちは、他人の日記に言及するだけの日記を書いていて、それは「日記読み日記」などと呼ばれて特別視されていました。いまはどちらかと言うと、他人のテキストに言及してばっかりで、結局自分のオリジナルのテキストがないようなところの方が目立つくらいです。
 当時はそもそも、他者に言及する場合、内緒で言及するならそれはそれでいいのですが、言及相手に知らせる場合には、メールを送るとか、アクセス解析をしていることを前提にリンクをはって言及するなどの行為か、あるいは、必ず対象が自分の日記を読みに来るという確信が必要でした。当時は、無断言及がどうとか、リンクをはるべきか否かで、やたら論争が起こっていたように思います。まあ、今も本質的には変わらなくて、どうでもいいことでしょっちゅう揉めているようですけれど。
 ブログの文化と個人テキストサイトの文化がどうとか、そういう話以前に、みながある程度の良識を持てばいいというだけの話なんですよね。とは言っても、良識ということにもみなそれぞれの思いはあるし、明確に定義はできないものなんですが。ネットというのがそれほど特別な空間とは思えないし、現実社会でのやりとりと同様の礼儀を考えれば、それほど揉め事はおきないと思うのです。
 冒頭の記述と矛盾するようですが、単にブログツールが普及し、気軽なコメントやトラックバックが広まったせいだけで、失礼な書き込みが増えたということではないと思います。そういう人は、ブログ以前にも似たようなことをしていたのだと思います。サイトの掲示板でも、メールでも、名乗りもしない、挨拶もないものはやっぱりあるし、そもそも現実社会においても、そういう人は少なからずいるようです。かつてのパソコン通信時代、あるいはインターネット時代初期には、ネットのマナーというのを厳格に言う人がたくさんいたというのもあるのでしょうか。あの「ネチケット原理主義」、それはそれで僕は苦手でした。全てのメッセージは圧縮して送るべきだとか、レスという用法はおかしいとか、柔軟に対応してもよさそうなところにまでギャーギャー言われるのには閉口気味だったのです。結局これはこれで僕の勝手な基準ですけれど。
 ネット独自の常識なんて言うのは、まあ知らなくても徐々に身につければいいことだと思うのですが、少なくとも、なんだかよく分からない人が、突然コメントやメールを名乗りもせずタメ口で投げつけてきたりすれば、いい気持ちはしないということくらい想像がつくのではないですかね。尤も、僕を不快にさせるためにそういうことをしているというだけのことかも知れませんけれど。
 まあ、テキストの内容とか、コメントやメールの内容に、「何をバカなことを」と思うことは多々ありますが、これは本質的には已むを得ないことで、公共の福祉に反しない限り、言論の自由は守られるべきなんだとは思います。僕は人間のできていない、気の短い人間ですので、話がきちんと伝わらない人にまで、根気よく説明するようなことは、仕事以外ではしませんので、「バカだな」と心の底で勝手に思って、相手にしなければいいだけの話ですから。冷静に考えると、絡む価値すらないところに、勢いで絡んでしまうこともありましたが。
 しかし今も昔も、本当に分かって欲しい人々にはこういう意向は全く伝わらず、かえってそれに対して二次言及なんてしてみて失笑を買い、全く気にする必要のない良識のある人々が、必要以上に萎縮してしまうものなんですよね。
 ということで、みなさんあんまり気にしないでください。ただの戯れ言です。「夜久さんにテロられた」とか「○ソキン氏にレビューされた」とか言って騒いでた頃が懐かしいですね。あんまり関係ないですが、昔日記猿人(現才人)のシステムとかそういうので盛り上がってた時代の日記を再録しておきます。