「初雪」-0468-

 雪は割と多い地方です。大学からさらに北へ一時間くらいのぼったところです。周りには有名な温泉地やらスキー場やらあるところです。

 12月に一度はそれなりに雪が降るという話はきいていたし、昨日はだいぶ寒かったので、午前中の回診を終えたあと、病院から道路をはさんですぐのところにあるカー用品店に、去年、やはり雪の多いところへバイトにいくために買ったスタッドレスタイヤを持って、タイヤ交換を頼んだのでした。天気予報なんてろくにみていないので、実は昨日雪の予報がされていたなんてことは全然知らなかったのだけれど、ピタリのタイミングでその日の夜には雪が降り始め、丸一日たった今、夜になっても雪は続いていたのです。

 そんなわけで、今日、外に出たら雪があることは知ったけれど、相変わらず天気予報なんてみていない僕は、この雪がこのあたりだけのものなのか、全県下のものなのか、大学に近い町に住んでいる医者たちに話をきいてみるまでわかっていないのでした。今日の関東地方は雪なのでした。

 麻酔科の先生は、この雪で電車が遅れ、手術も一時間遅れで始まったのだけれど、無事終了し、雪の降る夜道を、いつものように歩いて帰宅する僕なのです。スキーに行きまくっていた学生時代は、割と雪不足の年が多かったせいもあって、雪フェチ状態で、降る雪を追いかけてスキー場へ向かったものですが、仕事柄、なかなかスキーになんて行けないし、かえってスキー客の怪我人なんかで患者が増えたりするのであって、冬の楽しみをみつけられないでいるのです。

 スキーというスポーツは下手くそなりに大好きで、スキーがあるおかげで冬という季節も好きだったのだけれど、僕からスキーを奪ってしまえば、「冬なんてなんにもいいことない」と思ったのです。看護婦(看護師)さんは、「クリスマスとか、お正月とか、いろいろイベントがあるでしょう」と言うのだけれど、僕はクリスマスもお正月も病院で白衣を着るのですよ。

 学生時代、再試が設定された日は決まって雪だったとか、雪の中を酔狂にも我が家に集まって、雪で出歩けないからと、十数時間麻雀をうち続けたりとか、真っ白な雪をみていると、どうでもいいような思い出がよみがえってくるのでした。