改めて、先進諸外国の医療

 近未来の日本、国民皆保険制度は崩壊し、国民は「低価格で最低限の治療を行う公的病院」か、「充実したスタッフが最先端の医療を行うが費用の高い民間病院」の選択を求められるという設定で語られる二つの物語。

2018年 菊花病院

http://ncode.syosetu.com/n6668d/

2018年 地中海病院

http://ncode.syosetu.com/n0204e/
 これをファンタジーと読むか、ノンフィクションとして読むべきか。残念ながら、このような形で医療を崩壊させてしまった国はいくつも存在します。

「コンビニで葛根湯を」

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20030806#p1

 日本においては、おおむね自由に、患者さんがかかりたい医者に、かかりたい日に行くことができるわけですが、これが世界的にみて、かなり特殊なことであるということをご存知でしょうか。3時間待ちの5分診療などと叩かれる医療の世界ですが、予約患者を限定して、ゆっくり診察時間をとろうとしても、その日に無制限に患者がやってくれば、自ずと診療時間は短くなります。それぞれによい点も悪い点もあります。全てを求めるのは不可能です。

 例えば、カナダでは、医療費の自己負担は無いのですが、医師の診察を受けるためには予約が必要で、しかもその予約は何ヶ月も先になるといいます。医療先進国と思われているアメリカでは、基本的に、急変時でも、かかりつけ医に予約がとれなければ、ERと呼ばれる救急外来を受診するしかありません。最初のトリアージによって軽症と判断されれば、朝一で受付しても、夕方の診察になるのは珍しいことではありません。それを待てずに帰宅するときは「自分の責任において診察を受けない」旨の誓約書を書かされます。

 日本の医師の数は、先進国と比べて決して少なくないといわれていますが、外来を受診する回数などを考えると、圧倒的医師不足の国になってしまいます。そして、それは、緊急性がなかったり、そもそも治療を要しないような軽症患者の「コンビニ受診」などによって、医療費と医師のマンパワーの両方を浪費していると言えるのです。  例えば、アメリカでは、平均すると年に3回くらい外来を受診しているのに対し、日本人は年平均8回くらい受診しています。アメリカでの一般的な内科医の診療は、ひとりの患者さんにつき、初診であれば30分、再診であれば15分くらいの予約枠を用意しているといいます。

先進諸外国の医療

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060522#p1

 ここで、とりあげているカナダ型は、イギリスの医療制度と類似しています。医療費を削減するために、徹底的にアクセス制限をかけているのです。アメリカでは、民間保険会社が権力を持ち、完全に市場経済にのっかった形で医療が動いていますので、高いお金を払って良い保険に入るほど、提供される医療の幅が広がります。まさに、金次第の医療制度です。

 さて、日本もそういった「先進国」にならって医療改革をすると、与党が叫んでいるようですが、それがたどり着く先を想像してみて下さい。

http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/02/post_3.html

 さて、アメリカでは「個人破産の半数は医療費が原因」という報告があります。

米国内で破産した人のおよそ半数が、医療費の高騰が原因で破産しており、病気のために自己破産に陥った人々の大半は中産階級医療保険加入者であることが調査で判明した。

「病気から自己破産に陥る者のうち、病気になってからの個人負担費用平均額は1万1,854ドルであり、病気に罹患した際に保険に加入していた者は75.7%だった」

調査対象となった破産者は、医療保険に加入している場合、平均して1万3,460ドルを患者負担費用、免責費用、保険対象外サービス費用に支払っている。保険未加入者は平均して1万893ドルを自己負担費用として支払っている。

医療保険に加入する中産階級の家族でさえ、病気にかかれば、しばしば経済的災難へ陥ることになる」調査担当者は報告する。

先進諸外国の医療、追記

http://d.hatena.ne.jp/zaw/20060522#p2

 まず、世間でどう考えられているかは知りませんが、僕は日本の医療というのは世界最高レベルにあると考えています。また、日本では、その最高レベルの医療に対し、原則アクセスフリーです。また、低所得者であっても、国民皆保険のもとで、原則平等な医療が提供されるという夢のシステムを実現しているほぼ唯一の国であると思っています。少なくとも、僕は自分の体に何かおきたら、日本で医療を受けたいと思います。

 このような夢のシステムを是非維持して頂きたいと思いますし、そのために、我々医師たちが「ある程度の」自己犠牲を払っても良いとは考えています。ただ、このレベルを維持し、今後さらに発達する医療にも対応し、それを国民全てに平等に行使するためには、医療費も医者も足りないというのは明白だと思います。別に、医者の給料を上げろとか、待遇を良くしろという話が我々の主張の本質なのではありません。良い医療を維持するのであれば、医療費を削るなんてもっての他であり、きちんと金を使い、マンパワーも確保せよと言っているのです。必要な予算を削り、マンパワーの補充もなく、「ある程度」を超えた医者の自己犠牲のみで、医療レベルを維持しようと思っても、それは無理です。そうして、「ある程度」を超えてしまったことにより、今まで我慢していた医師たちが、ようやく声をあげはじめたというだけの話です。

 また、現行の医療制度を医者たちがつくったわけでもありませんし、本来、そういったシステムを作るのは国の責任です。臨床医の多くは、本来、医療にのみ専念していたいと考えます。制度作りのために臨床医になったわけではありません。ただ、現場にしかわからないことに関して、国に訴えかけることは必要だとは思います。

米国の失敗を日本に導入するな! 小泉―内科開業医のお勉強日記

http://intmed.exblog.jp/1302990/

もしも、「混合診療」が解禁になったら・・・:
http://www.med.or.jp/kaihoken/video.html
http://www.med.or.jp/nichikara/kongouqa/index.html


アメリカ資本は、保険会社は、日本の良質な医療を単なる市場としかみてないのです。
そして、医療の荒廃こそ、保険会社の稼ぎ場所なのです。

拙速な“混合診療”導入は しばし 待たれよ!

小泉さん、あなたが 売国などしないと 信じたい


旗頭の オリックス・宮内さんのご発言を某所からひろいました。
http://www.orix-sec.co.jp/brk_jour/mj_11.html
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>国民がもっとさまざまな医療を受けたければ、「健康保険はここまでですよ」、
>後は「自分でお払いください」というかたちです。
> 金持ち優遇だと批判されますが、金持ちでなくとも、
>高度医療を受けたければ、家を売ってでも受けるという選択をする人もいるでしょう。
>それを医師会が止めるというのはおかしいのです
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その家を持ってない人はどうすればいいのでしょう。そして、家に住めなくなったらどうしたらよいのでしょうか?>宮内さん

 あなたのいう民間の知恵とは浅知恵ですか? 
 天下の総理が浅知恵におどらされているのですか・・・ひょっとして?

医師会が止める理由はそこでしょ。貧富をとわず、日本国民の健康を守るという意味で
どちらがおかしいのか?是非ご考慮いただきたい。

スポンサーを守りたいばかりにテレビ各局は一方的に宮内さんの意見ばかりを紹介しているようです。メディア・リテラシーを高める好いチャンスなのでしょう。
最近目立つコマーシャルは保険・・・しかも医療保険ですね

 追記。「日本の医師の数は、先進国と比べて決して少なくない」というのは、OECD平均を大きく下回っている事実には反しているものの、当時から国が繰り返し主張してきたことであり、僕らは「医師過剰時代に備えて国家試験の合格率を下げる」と脅されながら試験に臨んだ世代です。仮に数の上で先進国と比べて「足りている」という判断だったにしても、労働強度を考えれば圧倒的に医師不足だろうというのが主張したかったところです。