現実逃避

 午前中回診し、午後から比較的小さな手術。夕方また回診した後、毎週病棟ナースと行っている簡単なカンファレンス。長期入院となっている方の今後のことについてせっつかれたのだけれど、長期の入院となった一因が我々の手術にも確実にあるわけでなかなかデリケートな問題です(別に手術ミスとかそういうことでは無いのですが)。それでもまあ、確実に少しずつ方向が定まってきて、つい先日も家族を交えてお話ししたばかりでもあり、もう少し時間が欲しいと思うのですが。こういう医療と福祉と家庭の問題の隙間に落ち込んでしまったようなことについての折衝とか、本当に気疲れします。
 仕事後、たまには学生でも誘って酒でも呑みに行きたいなと思って、弓道場を覗いてみると、この寒い中何人かが自主練習をしていたのですが、きくところによると彼らは試験の直前、一部の学生は試験の真っ最中なのだそうです。そういえば、この週末はある後輩の結婚パーティーで、彼らとはその時一緒に呑むことになるということも思い出し、今日のところは酒に誘うのはやめておきました。
 僕もかつては、試験直前や試験期間中に現実逃避のように楽器を弾いたり弓を引いたりしていたものだなと、平成生まれを含む学生たちに当時の自分を重ねつつたわいのない話をしているつもりでした。しかし過去形ではなく、今日現在の僕が、病院という日常から離れた空気を枯渇して、半ば現実逃避としてたどり着いたのがこの弓道場であったわけで、卒業して丸九年近くたつのに成長しないものだなと思ったのでした。