シャバの空気を吸う

 久しぶりの休日。目覚ましを全て切って眠れるというのが僕にとっては何よりも嬉しいです。医師として働くうちに体内時計が狂いまくって割とひどい睡眠障害に陥っていて、常に不眠気味なのですが、逆にせっかく眠れている時間は、その欲求に身を任せたいと思うので、午前中から予定を入れてしまい、決まった時間に起きなくてはならないということになると、休日の醍醐味を大幅に失ってしまいます。
 二度寝だか三度寝だかよくわかりませんが、とにかくかなり遅い時間までベッドで過ごした後、やはり雨というか霙のようなものが落ちてくる空をみて若干憂鬱になりながらも、とにかく家を出ることにしました。外で食事をとり、ショッピングモールをふらふらとして、温泉につかってから帰宅。大したことはしていないのだけれども、やはり家や病院とは違う空気を吸うということが精神衛生上良いのだとは思います。
 かつて一年目の研修医だった頃、土日も含めてほとんど早朝から真夜中まで病院に拘束されていたのです。まさに病院の空気しか吸えないような生活を何ヶ月も続けていた頃、ある土曜日か日曜日の午前中の包交(ガーゼ交換)の後病院を抜け出して、同期と外で昼食をとって、その後書店に行ってしばしふらふらした時に、別に刑務所の中を知っているわけでもないのに、心の底から「久々にシャバの空気を吸った」というように感じたことを思い出しました。尤も、間もなく病院から電話がかかってきて呼び戻され、すぐ捕まった脱走犯のような気分も同時に味わったのですけれども。