2002-01-01から1年間の記事一覧

「良きサマリア人」-0441-

世界で最大のベストセラー書に、こんな一節があります。 ある人がエルサレムからエリコへ下っていく途中、追い剥ぎに襲われました。その人は、追い剥ぎに身ぐるみはがされ、半殺しにされた上、その場に放置されました。たまたまその道を下って来たある祭司は…

「酒とタバコとお医者様」-0440-

医者の不養生。現在の日本社会の中枢を担う人々、いわゆるバリバリのサラリーマン達を思い浮かべれば、そんなもんなのかも知れませんが、医者っていう人々も、少なからず酒やタバコが好きなのです。嫌煙権とか副流煙とかいう、タバコの存在自体の善悪の論争…

「或る木曜日」-0439-

いつだったか忘れてしまったのだけれど、僕のある木曜日の生活。 予定手術の無い日に、仕事の整理をしたいところです。患者さんの部屋にいないときの僕らが何をやっているのかは分かりにくいと思うんです。大学一年生の頃、早期体験実習とかなんとかで、神経…

「医学部受験回想」-0438-

いや、唐突なんですが。 大学入学の時点では、もうなんか凄く大人になったような気がしていたし、十八歳という状態がそんなに大きくかわることなんて実感していなかったのですが、お腹が痛いといってやって来るティーンエイジャーたちは、明らかに僕とは違う…

「ことばづかい」-0437-

韓国には相対的な敬語の使い分けがないらしいです。父は決して申し上げず、お客様の前だろうと、お父様はおっしゃるのです。僕らは例えば自分の指導医が患者さんに話をするようなときに、「担当医が夕方伺いますので」とすんなり言えればいいのですが、「先…

「専門バカ」-0436-

金曜日の僕は、半日の研究日をもらっているのです。大学の外にいる医者たちは、こうした「研究日」という勤務病院フリーの日を認められていることが多く、大学の外来に出ていたり、研究室に出入りしていたり、様々に使っているようです。僕も名目上、金曜日…

「帝王切開とか」-0435-

実は僕、恥ずかしながら出産をみたことがなかったんですよ。学生時代から通算7年半も医学・医療の世界に過ごしながら、死にゆく人々は何人となく見つめてきながら、生命の誕生の瞬間を知らなかった僕。3年前に産婦人科のポリクリ(臨床実習)中、分娩をみる…

「日曜日」-0434-

日曜日を日曜日として使えることってすごく素晴らしいことだと思うのです。 運転中とか入浴中は当然すぐ出られない携帯電話に、きちんと留守番電話設定してあるのに、病院からは数分のうちに何回もコールを繰り返して、全然電話に出ないなんて言われるのは心…

「ナルコレプシー」-0433-

体調の悪い朝もあります。それでもいつもの時間に起き抜けて、いつものように動脈血採血してみたり、いつものように回診についたりしなければなりません。なんとなく気分が優れないような時に限って、やっかいごとが発生したり、思いもかけないようなことを…

「僕の居場所」-0432-

人間には居場所が必要なのです。 いつだったか、かつての同級生や、音楽つながりの人々と酒を飲んでいた時に、うちの学年でつくった名簿が出てきました。ある方が、「私はこんな名簿をつくって連絡をとりたいと思う人はいない。出来ることなら連絡を絶ちたい…

「幻聴」-0431-

電話の音が怖いのです。 家に帰ってシャワー浴びはじめるとき、最初のお湯が、シャワーのホースをあがってくる音と、給湯器がお湯を作り出すカラカラ言う音が、電話の音の様にきこえることがある、という話を誰としたのかは覚えていないのですけれど、僕にだ…

「内視鏡とアニサキス」-0430-

火曜日のお仕事は胃カメラから始まります。病棟の術後患者さんの様子とかざっとみて、動脈血採血とか酸素濃度の指示を出したその足で向かうのは内視鏡室。回診の前に組まれた検査のいくつかは、僕のお仕事なのです。 大学にいた間は胃カメラを握ったことなん…

「外科医のお仕事」-0429-

去年の今頃は六時や七時には採血始めてなけりゃならなかったわけですが、最近はだいたい毎日八時くらいに病院に行きます。月曜日はその週の予定手術のカンファがあるので、5階病棟からカルテと画像持って読影室へ赴き、シャウカステン(レントゲンとかをみる…

「オン・コール」-0428-

大学にいた間は検査室確保して、コンピュータでオーダリングして、看護婦改め看護師さん頼んで、道具かき集めて、患者さん搬送して、上の先生探してなんて、実際の手技よりはそれ以外のことに時間と神経を使っていたわけですけれど、今の環境では、「この患…

「クラス替え」-0427-

クラス替えとか席替えとかいう行事は大好きだったように記憶しています。人一倍ドキドキしながら新たな出会いを待った反面、友達の友達といった輪の広げ方を使えない、全くの新しい世界を怯えるようなところもありました。 僕の通う幼稚園から、同じ小学校に…

「執刀医ザウエル」-0426-

9時から5時の勤務なんかで手術して術後診ながら、別の患者さんの相手もしたりなんかできるわけなく、大学のとてつもなく安い各科一律の給料で病院内をかけずりまわるような生活に耐えていられるのも、外科医としてメスを持つことを許される瞬間があるから…

「翻訳」-0425-

僕らは物事を考える時に、言葉を使うけれど、僕らが考えていること全てが、そのまま言葉になっているとは思わない。語彙の少ない人は、それだけ思考力が劣るというわけではないと思うし、言語の無い社会でも、人々は思考したのだ。だから僕の考えを映すのに…